高田さんは早速、行動に移した。

5年ほど前から、いつか役に立つのでは、とインターネットビジネスを学んできた。客室乗務員を養成するオンラインの専門学校を開きたいと考えていた。漠然と抱いていた将来の夢だったが、それを実現させるのが少し早くなったと考えるようになった。

グラフィックデザイナーの夫がデザインしてくれたホームページを開設。SNSで宣伝をして、6月に小さなビジネスをスタートさせた。

航空会社では採用の中止や抑制が続いている。しかし、いずれ世界の人の移動は戻ってくる。その時には改めて客室乗務員の雇用は再開するはずだ。

「世界を舞台に活躍する日本人がもっと増えてくれたらうれしいですね。そのための役に立ちたいと考えています。ニュージーランド航空でいい経験をさせてもらいましたので、そのキャリアを採用に活かすことで、自分自身も磨いていきたいです」

オンライン面談をする高田さん
写真提供=高田さん
オンライン面談をする高田さん

リストラで学んだ「危機を乗り越える生きる力」

ニュージーランド航空は会社のサービス方針を「Go Beyond」と教育する。直訳すれば「超えていく」であり、意訳すれば「お客様の期待の先へ」というような意味合いとなる。リーダーシップ教育では「エンパワリング」と言って、一人ひとりのCAを信頼し、権限を与えることを教わった。高田さんは職場で学んだノウハウを、受講生に惜しまず伝えている。

スタートしたばかりのビジネスの収益はわずかなものだ。それでも高田さんは受講生が熱心に話を聞き、質問してくれることがうれしい。「受講生たちが客室乗務員になって、世界を飛び回る日が来ることがとても待ち遠しいです」と話す。

高田さんは、リストラを経験し一つの答えを持つようになった。それは、本業だけでない強みや能力を身につけることが将来を大きく左右するということだ。本業以外でも稼げる力を身につける。それが、危機を乗り越える手段になり、「生きる力」となると考えている。

今のところ、日本の企業の雇用は守られているが、高田さんのように、早くから将来に備える柔軟な発想は重要だ。これをマルチタスクなどとも呼ぶが、子育てや主婦の仕事もあるので大変さは人一倍だ。日本の客室乗務員だけでなく、コロナ後を生きていく働く人すべてに大いに参考になるのではないだろうか。