ノウハウや問題意識を共有してきた銀行による結集は極めて自然な流れ

3行の共通認識は、限られた経営資源の中でいかに顧客満足度を向上させるかという点です。個人顧客が北東北エリアを往来する中で、無料で使えるキャッシュポイントが増えれば喜ばれるでしょうし、中小企業等の顧客が接点を持てない地域でのビジネス・パートナーを探せる機会があれば、取引先企業の事業繁栄につながると共に銀行貸し出し等にも発展する期待も持てるでしょう。取引先企業の相互紹介は、銀行間の信頼関係がないとなかなかできるものではありません。

営業活動に係る連携だけではなく、業務インフラに関する提携も進んでいます。3行はサイバーセキュリティ情報の共有と対応策に関する研究のための「北東北三行共同シーサート(CSIRT=Computer Security Incident Response Team)」を2015年に設置しました。銀行をめぐるサイバー犯罪は減らず、警察庁の統計では2019年におけるインターネットバンキング不正送金は1872件、25億円以上に上っています。金融庁も危機感を持っており、調査を進めています。しかし、地銀にとって単独行が対処するには厳しい事実もあります。そこで、3行は情報セキュリティに関する情報や課題を幅広く共有、共同研究することで、情報セキュリティの協力体制の構築することを決めました。

野崎浩成『消える地銀 生き残る地銀』(日本経済新聞出版)
野崎浩成『消える地銀 生き残る地銀』(日本経済新聞出版)

また、他地域でも同様の連携はありますが、これら3行も「大規模災害等発生時における相互支援協定」を締結し、大規模災害等が発生した場合に相互に支援することで地域の金融機能の確保をすることとしました。例えば、応急対策および復旧活動等に必要な要員の派遣、車両、通信機器等の貸与、仮店舗等の施設の提供、そして飲料水、食料品、生活支援物資等の提供などを相互に支援することとしています。

さらに2019年にはこれら3行に山梨中央銀行を招き入れて、ITベンダー数社と共に株式会社フィッティング・ハブを設立しました。この会社は、ブロックチェーン技術の活用を下地として、電子交付サービスをサービス内容としており、安全で低コストのシステム構築を見通しています。まさに、フィンテックの技術共有について経営資源を持ち寄って解決しようという思想です。

ここまでを踏まえても、青森銀行、岩手銀行、秋田銀行の結束は固く、また青森銀行とみちのく銀行の連携を踏まえると、人口減少などの経営課題を共通認識とする、そしてノウハウや問題意識を共有してきた銀行による結集は極めて自然な流れだと思います。

将来的には北海道と北陸地方を含めた大連合になる可能性も

さらに、頭の体操を駆使すれば、ほくほくフィナンシャルグループの合流も捨象できないと思います。ほくほくフィナンシャルグループの北海道地域を担う北海道銀行は、AAIネット各行との提携を経て、結果的にAAIネットへ参加しているのと概ね同値となっています。こうした動きは地域での合従連衡の意識付けの一部にはなってもおかしくないと思います。

したがって、第一段階としては、青森県内における青森銀行とみちのく銀行の統合、第二段階としてはみちのく銀行を含む青森銀行、岩手銀行、秋田銀行による連合、そしてさらに発展形にあるのがほくほくフィナンシャルグループを含めての再編すら考えられると思います。

このため時間軸として、段階的統合はあるにせよ、最終形としては北東北とほくほくの地盤である北海道と北陸地方を含めた大連合に発展するポテンシャルは存在していると思います。

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