みちのく銀行と青森銀行が合併すると貸し出しシェアは7割を超える

前者に関してはATM利用手数料の相互無料提携、取引先の本業支援のための商談会等の共同開催、地域イベントの共同運営・協賛を、後者については事務処理などのバックオフィス業務の共同化を検討対象としており、このうちATM利用手数料の無料化はすでに開始されています。

正直なところ迫力に欠ける内容ですが、バックオフィス業務の共同化に関しては、踏み込み方によっては経営統合への布石と十分になりうると思います。

しかし、この2つの銀行は青森県のトップバンクだけに貸し出しシェアは7割を超えると思われます。したがって仮に合併の合意に至ったとしても、長崎県の十八銀行と親和銀行の合併をめぐる公正取引委員会による渋滞と地域シェア的には似通った状況です。このため、通常であれば承認への茨の道を見込むでしょう(※)。しかし、独占禁止法上の特例措置があるため、この時限性(10年)から逆に統合へ向けて弾みがつく可能性はあると思います。

※統合が競争の阻害となるか否かの1つの物差しはHH指数(ハーフィンダール・ハーシュマン指数)が重視されていて、市場シェアの自乗の和が2500を超えると審査により慎重さが加わります。ですから、シェアの和が70%を超える場合は、ほとんどがこの基準に引っ掛かる形となります。

独占禁止法の特例措置などそもそも必要ない

余談ですが、本質的には独占禁止法の特例措置など必要なく、地域再編を認めるべきだと思います。その理由は簡単で、公正取引委員会の考え方が時代錯誤だからです。確かに1997年までは、監督当局が概ね都道府県単位をもとに、地銀の店舗展開について越境の設置について抑制的に運用していた印象があります。このため、その時代であれば、「地域市場」の定義については都道府県単位でシェアを用いるのは妥当だと思います。

しかし、1997年に店舗の新設の実質的許可の前提となっていた店舗通達が廃され、実態として地銀が他地域に店舗展開する自由度が確保されたのです。このため、都道府県を市場の単位とする考え方は妥当性を欠くこととなりました。なぜなら、仮に当該地域の合併が貸し出し金利の引き上げにつながれば、収益機会を求めて他地域の地銀がどんどん進出することとなるでしょう。したがって、長崎県を含め、県単位を市場と見なす時代は終わったと考えるべきでしょう。

夜の東京と一万円札
写真=iStock.com/F3al2
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これに頭の体操的に加わるのが、岩手銀行と秋田銀行です。隣県地銀は「仲が悪い」ことが少なくないのですが、青森銀行、岩手銀行と秋田銀行の3行は極めて親密な関係にありました。

例えば、AAIネットによるATM提携が象徴的で3行相互でATM利用の手数料を無料化することで相互の顧客の利便性を高めるものです。この2000年からのATM相互開放からまもなく、2003年には3行の法人顧客の合同商談会などを通じて顧客間の交流やビジネス機会の創出を図る「Netbix」(ビジネス情報交換ネットワーク)がスタートしました。