※本稿は、今井 澂『2020の危機勝つ株・負ける株』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
「ポスト安倍」はとっくの昔に決まっていた
安倍晋三首相は2019年7月の参院選に合わせ衆院を解散し、総選挙に打って出ると見られていました。憲法改正の発議に向け、自民党、日本維新の会など改憲勢力の糾合を目指すことが大きな目的です。
改憲は、いわば安倍政権の最大の課題です。安倍首相は、総裁任期が切れる2021年9月まで首相を務めることができますが、あと2年足らずですから(編集部註:昨秋時点)、時間的に余裕があるとはいえません。一気に改憲発議に持っていくには盤石な態勢が必要で、そのために解散総選挙は避けて通れない道と考えられていました。
ところが、W選挙は結局のところ見送られました。それはそれでよしとしても、安倍政権にとって参院選の選挙結果は惨憺たるものでした。
自民党は改選議席から9議席減らし、単独過半数も失いました。目指していたはずの改憲勢力伸長も果たすことができず、自民党と公明党の与党、改憲に積極的な日本維新の会計81議席で、非改選も含めた改憲勢力は、改憲発議に必要な3分の2(164議席)を割ることになりました。
この結果はある程度見えていたことで、誤算というわけではありません。
むしろ、これは安倍首相の戦略の転換といえます。どうあっても目的を達成するために、ある意味で迂回作戦とでもいうべき方法をとろうとしているように私の目には映ります。
どういうことか。
「禅譲」ではないだろうかと、私は考えています。少しさかのぼって説明しましょう。
昨年5月、菅義偉官房長官が訪米した「意味」
きっかけは参院選の2カ月前、新緑まぶしい5月の出来事でした。菅義偉官房長官が、ペンス副大統領と会談するため訪米を行いました。
9日にはペンス副大統領と会談し、10日にはニューヨーク国連本部で拉致問題担当相としてシンポジウムに出席、日本政府の取り組みを報告しました。危機管理を担当し、ふだんは東京から離れることのない官房長官の訪米は、異例中の異例と騒がれました。
外務省でこの件の調整が行われ始めたのは、4月初旬のころと推察されます。覚えておいでだと思いますが、2019年5月というのは北朝鮮問題に対する日本の姿勢があわただしく変化した時期です。