若者は顔をさらすことを嫌う
職場で電話を取りたがらない新入社員が多いことは周知の事実になってきました。彼らにとっては突然電話をかけたり、かけられたりの行為が日常のひとコマではありません。必要な場合、まずLINEで「いま、電話してもいい?」と事前に確認してから、電話につなげます。電話をせずにLINEのやりとりでコミュニケーションを完結させることのほうがふつうです。そんな生活を送ってきた彼らには、友人でも何でもない見知らぬ相手に入れる断りの電話は、とてつもなく難度の高い作業なのです。
さらに言えば、実際に初対面の相手と顔を合わせるというハードルも高い。彼らはリアルな素顔での、生のコミュニケーションに対して抵抗感があります。とにかく顔をさらす行為への拒否反応が強いです。
たとえば、学生証には持ち主である本人の小さい顔写真が貼ってあります。あの上にプリクラで加工した顔写真を貼り付ける学生がいます。言うまでもなく、これでは証明書になりません。
期末試験で、各自の机の上に学生証を出したとき、「プリクラを剥がしなさい」と注意すれば、素直に剥がします。でも試験が終われば、また貼り直している。顔を隠していないと落ち着かないのです。
大学教授もLINEやスタンプを使いこなす時代
そのため、新型コロナの影響で広まったZoomなどでのオンライン授業であっても、顔を見せたがらない学生が多数派です。顔だけ非表示にしたり、仮面で隠せるアプリを使ったり、アニメのキャラクターのアイコンを表示しています。
仲がいい友達だけのグループなら気にしません。でも、そこへ教員や知らない学生が入ってくると緊張します。彼らの表情がサッと変わります。オンライン授業ではボイスだけにして、画面に顔を映すのは勘弁してほしいと思う学生は男女ともに多数派です。もっとも教員側もそのへんは心得ており、またパケットの節約対策もあり、常時顔を出すことを求める教員は、現在ではもういないと思います。
だからこそ彼らは使い慣れたLINEを好みます。NOの意思の場合はレスポンスが悪くなりますが、OKの内容に関しては、LINEであれば事細かに伝えてきます。対面で会っているときとは打って変わって饒舌になる学生も珍しくありません。
彼らに合わせて、私もゼミの学生とコミュニケーションを取る際はもっぱらLINEです。テキストだけではなく、スタンプも頻繁に使います。スタンプは言葉以上に学生とコミュニケーションをうまく取りやすい。たとえば「頑張れ」と伝えるのに、生の声より、「頑張って」とLINEのキャラクターのスタンプを打つほうが、彼らからの反応は確実によくなります。