イマドキの若手社員は転勤や出世を断る。なぜなのか。産業カウンセラーの渡部卓氏は「若者が重視している『ワークライフバランス』の意味を正しく知らなければ、上司と部下のすれ違いは解消できない」という――。

※本稿は、渡部卓『あなたの職場の繊細くんと残念な上司』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。

パーティーで生ビールで乾杯
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若者が怖がるのは失敗の評価

いまの若い世代は、飲み会や合宿の幹事を嫌がります。

ある学生に幹事を任せたいと思って、私が水を向けても、たいてい「勘弁してください」「嫌です」とハッキリ言います。

私は、学生が自らゼミ合宿で箱根や軽井沢など旅館に宿泊するプログラムを作ったり、温泉やレクリエーション施設を探したりする経験が勉強になると思っています。

しかし、彼らの答えはだいたい同じです。

「もし私が幹事を任されても、参加者全員を満足させられる自信がない」と返してきます。それでも再度、「失敗してもいいから。キミたちの好きなようにやってごらん」と促しても、翻意して承諾してくれることはまずありません。

よくよく理由を尋ねてみると、とにかく参加者の反応を恐れています。情報化社会なので、もっといい宿泊場所があった、もっといいルートがあった、なんてダメ出しをされるかもしれない。失敗の評価を、仲間から下されることが嫌なのです。

幹事役が苦しい理由はSNSやネットの発展

それはあながち杞憂とも言い切れません。実例として、こんな話を知人から聞きました。知人の会社が新人合宿をある温泉でやったそうです。その際、1人の男性社員が率先して幹事になって取り仕切りました。参加した社員たちは着いた瞬間に「えっ、こんなとこに泊まるのか」と感じる旅館だったそうです。サービスも風呂も料理も満足のいくレベルではなかったというのです。

しかし、1人として幹事に直接、文句を言う人はいなかったそうです。ただ、SNSにはこっそり「ありえない」「クーポンを使えばいいのに」などと不満を書き込んだ社員がいたというのです。

旅館や飲食店は、簡単にネット比較できるため、選択での失敗も見えやすい。ただ、実際には、同価格帯ならほかの旅館も似たり寄ったりだったはずです。ネットの広告ではよく見えても、実際には行ってみないとわからないもの。そのため、幹事が参加者全員を100%満足させるのは最初から無理だということは誰だってわかります。

そうなるとリーダーや幹事は貧乏くじを引くことも多く、それが直感的にわかるいまの若い人たちが及び腰になる気持ちもわからなくはないのです。