「切なかった体験」ツイートでフォロワー6万人に

しばらく考えた末に、まずは思いつくままに、自分の切なかった体験をつぶやくことにしました。

例えば、下記のような投稿です。

「父と母の馴れ初めを聞きました。母は元々デート商法で高級布団を売りつける天才で、父にまんまと高級布団を売りつけたそうです。一方で父は女遊びの天才で、高級布団を買うことを口実にデートを重ね、最終的に結婚に至ったそうです。聞かなければ良かったです。」
「大学生の頃、付き合っていた彼女に『誕生日に何が欲しい?』と尋ねたら、『取り鉢が欲しい。』と言われたことがありました。変な子だなぁと思いつつ、僕なりに一生懸命選んで、取り鉢をプレゼントしました。すると、号泣されました。彼女が欲しかったのは、トリーバーチでした。」
「YouTubeでローラが料理を作っていたので、美味しそうだな、食べてみたいな、と思っていたら、ローラが作っていたのは犬のエサでした。」

こんなことを、毎日つぶやいています。すると、フォロワー数は1年間で6万人以上増えました。そして私の投稿は出版社の編集者の目にとまり、せつないエピソードをまとめた本も出版しました。こうして私は、インフルエンサーと呼ばれるようになりました。

大企業にとって社員のSNS運用はリスクになる

伝統的な大企業の多くは、社員のSNS運用を「リスク」と捉えています。私の働く会社も例外ではありません。確かに個人が炎上した際にもたらす、企業への被害は甚大です。いくら気をつけていても、炎上してしまうことはあるし、そんな「リスク」を抱える以上の「メリット」はないと、大企業サイドは考えています。

実家が全焼したサノ『実家が全焼したらインフルエンサーになりました』(KAD実家が全焼したサノ『実家が全焼したらインフルエンサーになりました』(KADOKAWA)OKAWA)
実家が全焼したサノ『実家が全焼したらインフルエンサーになりました』(KADOKAWA)

また、大企業の社員にとっても、大企業というブランドの恩恵を受けているため、リスクを取ってまでSNSで個人をブランディングする必要がない、と考える人が多数です。

かつて、SNSで頻繁に発信していたサイバーエージェントの藤田晋社長は、近頃SNSを更新しない理由を、新R25のインタビューでこのように答えていました。

「会社の規模が大きくなってきたのか、社会に対する影響が大きくなったのか、なんか言うと(まわりから)言われやすくなったじゃん。だからSNS自体がちょっと窮屈になってきたんだよね」

さらに、「名を上げる段階はSNSを駆使してメッセージを伝えて、何がしたいのか、自分は何者なのかを伝えていたけど、今はもう、そういうフェーズではない」と答えていました。

大きくなった企業ほど、SNSで得られる恩恵は少ないのかもしれません。しかし今回はあえて、大企業で働くサラリーマンがSNSを活用することで得られる「メリット」のほうにフォーカスして、お伝えしたいと思います。