「うちの子、かわいいでしょ?」が成長に与える悪影響
YouTubeで一大勢力となっているコンテンツのひとつが、幼児期から小学校に上がる前後あたりまでの子供の姿を追った動画だ。
日常生活の中での“かわいさいっぱい”のわが子の表情や言葉やしぐさを親がカメラで追い続け、撮れた映像にBGMやテロップなどを使ったプロ顔負けの編集を施すというのが、よくあるフォーマット。
こうした動画に心奪われる視聴者は多いようで、10万、100万単位の再生数が記録されている動画も珍しくない。また、わが子のチャンネルが叩きだす広告収入が本業の稼ぎをはるかに上回るため、専業のユーチューバーへと転身する親もいるという。
だがYouTubeにあふれるあの手の「うちの子、かわいいでしょ?」動画が、ほかならぬわが子の成長と発達にネガティブな影響を与えかねないことを、沢井佳子氏は指摘する。
沢井氏は認知発達支援と視聴覚教育メディア設計が専門で、幼児教育番組『ひらけ!ポンキッキ』(フジテレビ)の心理学スタッフ、静岡大学情報学部客員教授等を歴任し、現在は日本こども成育協会理事で、幼児教育シリーズ『こどもちゃれんじ』(ベネッセ)、幼児教育番組『しまじろうのわお!』(テレビ東京系列)などの監修を担当している。
「幼児を映したYouTube動画で圧倒的に多く、また人気が高いのが、2歳前後のわが子を追ったチャンネルです。それには理由があって、話し始める年齢だから。映像だけじゃなく音声もあるので、撮影者である親のみならず、視聴者の側も手放しにかわいいと感じるんです。ヒトの遺伝子には、幼児の声の音域に注意が引きつけられるプログラムが組み込まれていると言われており、子供が声を発すれば、大人は本能的に気になってしまうようです」(沢井氏、以下同)