ただし、その場合に言論空間が狭まってしまうことも考えに入れておくべきだ。また、杉田議員にしても、彼女自身が他人を中傷してきたとはいえ、彼女への憎悪感情も寄せられていることは留意しておくべきだろう。とりわけ容貌をあげつらったり、異性関係をほのめかしたりするものは彼女の名誉感情を傷つけるだろう。

常に自分の言いたいことを言い続ける

伊藤詩織さんご自身の件については、ご本人が自由に訴訟をすればよいと思う。名誉感情を傷つけた人に訴訟を起こすことが、彼女自身の癒やしになる可能性もある。けれども、今回の意欲的な裁判で仮に勝利し、杉田議員から数十万円のお金を取れたとしても、匿名のアカウントによる誹謗中傷はなくならないだろう。

著名人に訴訟リスクを負わせることで発言を中傷度合いの少ないものに誘導できても、相変わらず匿名アカウントは誹謗中傷をし続けるだろうし、他人が何を言っているかを“エゴサーチ”で探して見に行けば、言われている本人も傷つき続けることになるだろう。

私自身、今まで訴訟を考えたことが全くないというわけではない。しかし、人前に顔と名前を晒して言論人として生きていくということは、基本的には外野が言いたい放題言う環境に身を置くということだ。極端な左右のモンスタークレーマーに一つ一つかまうことは、むしろ私の発したい中心的なメッセージから遠ざかることになる。言論の機会があれば、相手の憎しみに対するリアクションではなく、常に自分の言いたいことを言い続けるべきだと思うのだ。ステイ・オン・メッセージ。私が特段、自らについて多くを語らなくとも、読者の皆様にはお察しいただけることと思う。

【関連記事】
三浦瑠麗『人工知能にはない意識の本質「クオリア」とは』
年収800万円男性と結婚した"セレブ妻"が築40年木造アパート暮らしに転落した顚末
元ラガーマンの43歳が「100円で朝まで粘るマック難民」に転落したワケ
662人を日本に帰すため、ソ連兵の性的暴行に耐えた未婚女性15人の苦しみ
なぜNiziUは世界を興奮させるのか…日本のエンタメが「韓国に完敗」した理由