帰国子女が学級委員に自己主張

とりわけ96年以降の流通改革が功を奏してP&Gジャパンは、02年から06年まで5年連続で2ケタ成長(金額ベース)したが、07年に関しては1ケタ台に成長が鈍化した模様だ。

なぜ、模様などというあやふやな表現をするかといえば、P&Gジャパンは売上高や営業利益などの決算データを開示していないためだ。「5年連続の2ケタ成長」「07年は1ケタ成長だが業界水準は超えた」などとP&Gジャパンは言うが、実数はわからない。開示しない理由は「ライバル社に情報を与えないため」なのだそうだ。

ちなみに、P&Gは07年で売上高765億ドル(約9兆円)、営業利益155億ドル(約1兆8000億円)、配当後の純利益103億ドル(約1兆2000億円)。まさに超優良なグローバル企業であり、日用品のガリバーである。同社最大のブランド「パンパース」をはじめ、「アリエール」「パンテーン」など23の10億ドルブランドをもつ。

花王は08年3月期で売上高1兆3185億円、営業利益1162億円と日本企業としては優良だが、P&Gとは規模の違いが歴然としている。

07年9月にP&Gジャパン社長に就任した桐山は、「(P&Gジャパンの)現状には満足していない。やれることはもっとたくさんある」と話す。が、外部の人間にはP&Gジャパンの現状がわからないのである。

日用雑貨業界のあるアナリストは、次のように解説する。

「日本の日用品業界を学校の教室に例えると、業界トップの花王は女子学級委員、ライオンは良家の子女、資生堂は人気ナンバーワン女子。対して、P&Gジャパンは帰国子女のイメージ。正論を堂々と主張するが、仲の良い友達以外には決して自分を見せようとはしないから」

96年秋に帰国子女は、“学級委員”に、ある自己主張をした。花王の物流子会社が、イトーヨーカ堂の一部店舗で日用品の共同物流業務を受諾したのに対し、P&GとP&Gファー・イースト(当時)は猛反発したのだ。「花王がP&Gを含む他メーカーの商品の物流を手がけることで、花王に様々な自社情報が流れる」ため自由競争が阻害されるなどと主張。「日頃はあまり接点がなかった会社なのに、急に本社に呼ばれました」(当時の全国紙担当記者)。

自己主張により、実態がこのとき少し明らかになる。この当時の各紙によれば、P&Gジャパンの年商は約2000億円、あるいは約18億ドルなどとなっている。当時は花王の約3分の1の規模だった。