多角的な視点からポン・ジュノの実像に迫っていく

著者は、毎日新聞の記者時代に韓国映画の魅力にとりつかれ、自ら望んでソウル特派員となる。元記者ならではの綿密な取材に基づく本書は、単なる監督論にとどまらず、多角的な視点からポン・ジュノの実像に迫っていく。

彼の母方の祖父は〈韓国モダニズム小説の先駆者であり、朝鮮戦争時に「越北」し、歴史小説を書いて平壌で亡くなった〉。一家が「南北離散家族」であることを、彼はほとんど語らないという。

彼を支える、韓流エンタメ界の「ゴッドマザー」にスポットを当てた一章はさらに興味深い。サムスン財閥系企業「CJ」の副会長イ・ミギョンは1995年、スピルバーグ監督のドリームワークスSKGに3億ドルを出費して、米国映画業界に本格参入。『殺人の追憶』『母なる証明』『スノーピアサー』『パラサイト』と4本のポン・ジュノ作品に投資し続け、ついに金的を射止める。オスカーを狙った宣伝キャンペーンに100億ウォン(約9億2800万円)を投じたのだ。

イ・ミギョンは、「アジア市場だけでも、『韓国エンターテインメントの植民地』にしてみたい」と公言してはばからない。その野望に『パラサイト』で一歩近づき、すでに二の矢も放っている。Netflixで配信され、日本中が熱狂するドラマ『愛の不時着』も、CJ傘下のケーブルテレビが製作した。

本書は、「快挙」の裏にあるしたたかな戦略と作品の変容に鋭く迫っている。

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