今後5年間で1億4900万のデジタル系新規雇用が生まれる

もっとも、コロナ禍に起因する景気後退の深刻化を受けて、技術へのアクセスがあるだけでは不十分であることが明らかになってきた。「何でもリモート化」の進展で、学生だろうが労働者だろうが、世代を問わず誰にとっても、デジタルのスキルが基本能力として必須となっていくという認識がかつてないほどに広まっている。

その短期的な背景としては、職場に出向いて働く人とリモートワークを続ける人が混在する「ハイブリッド経済」を数カ月あるいはそれ以上に渡って経験したことが挙げられる。

当然のことながら、この「ハイブリッド経済」はではデジタル化がさらに進む。長期的には、すでに進展している自動化の波のなかで景気回復が進む可能性が高い。

マイクロソフトの推定では、今後5年間にテクノロジー系の新規雇用創出数は世界全体で1億4900万ほどに上る。この新たに創出される雇用のうち、単独で最も大きな部分を占めるのはソフトウエア開発だが、データ分析やサイバーセキュリティ、プライバシー保護といった関連分野の雇用も大きな役割を担うだろう。

勢いを増し続けるサイバー脅威

残念ながら、今回のコロナ禍でデジタル技術は社会経済にこれまでになかったようなインパクトをもたらしただけでなく、その兵器としての威力も高まっている。パンデミック発生から最初の数週間はサイバー攻撃の減少が見られたが、これは単なる小休止に過ぎず、ヨーロッパやアジア、北アメリカで、病院・医療機関を標的にした犯罪集団や国家ぐるみの攻撃が相次いでいる。WHO(世界保健機関)でさえ攻撃対象になった。

このため、医療機関のメールアカウントの保護や、国連、赤十字国際委員会などのグローバル機関とテクノロジー企業が手を結んだ国際協調体制づくりなど、サイバー脅威への対抗措置も、これまで以上に強化されつつある。

長い目で見れば、パンデミックはデジタルテクノロジーの文明の利器としての存在感を劇的に高めると同時に、社会的不平等を悪化させる。いずれにしても2020年代の幕開けに予測されたことが、当初の想定より早く現実のものとなる見通しで、その影響も想定以上に大きくなりそうだ。