お笑いコンビ・オリエンタルラジオの中田敦彦さんは、2018年からオンラインサロンを運営している。会費は月額5980円だったが、今年5月から980円に大幅値下げした。中田さんは、「コロナの影響であまり高額な費用は払えないという会員の声に応えた。こういうのは日常茶飯事。座右の銘は『前言撤回』だ」という——。

※本稿は、中田敦彦『幸福論 「しくじり」の哲学』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

中田敦彦氏
撮影=黑田菜月

根底には「独りになりたくない」という恐怖感がある

テレビの世界から、YouTubeの世界へ。それだけでも「え、よくやるな……」という目で見られがちだったのだけど、それだけではない。ぼくは2018年から、オンラインサロンもはじめた。

芸人として舞台に立つことや、タレントとしてテレビ番組に出演するのとは、またかなり毛色が違った活動だ。どんどん「テレビで見る芸人」から離れていき、世間的な印象もかなり変わってくるだろう。

それでいいと思った。この変化の方向は、仕事上の紆余曲折の末ということもあるけれど、自分の性格や心情から考えて必然だった気もするから。

ぼくには、独りになったら寂しくて死んでしまいそうという恐怖感が、いつも根底にある。自分でコミュニティをつくれば、なにがしかの安心が得られるのではないか……。オンラインサロンの開設には、そんな個人的で切実な思いもあったのだ。

寂しがり屋なのは、昔からずっとそうだった。ひとに話を聞いてもらえなければ、生きている意味がないとすら思ってしまう。芸能人ならだれもが仕事の一部としてこなさなければいけないマスコミからの取材、あれを苦手とするひとも多いけれど、ぼくはまったく苦にならない。むしろ大好きである。

だってインタビュアーは、まず間違いなくぼくの話に耳を傾けてくれる。ひとが聞いてくれるというのなら、いくらでもしゃべりたくなってしまう。逆に、壁に向かって独りでしゃべっていろと言われたら、そんな苦痛には1分と耐えられない。

芸人としてデビューしようと決めたころ、なによりもまず相方探しに注力したのも、寂しがり屋だったせいだ。競争の激しい世界でのし上がるには「これぞ」と思える相手と組まねば勝負にならないということもあったけれど、それよりむしろ、独りになりたくないという気持ちが強かった。コンビを組めば、ずっとだれかとしゃべっていられるだろうと踏んだのだった。