月額5980円から一気に980円へ値下げした理由

2020年に世界中を襲ったコロナ禍では、オンラインサロンも大きな転換を迫られた。

外出がままならないので、まずはコンテンツをオンラインに完全にシフトした。それまではオンラインサロンといっても、ぼくのYouTubeチャンネルの収録の生観覧など、リアルな活動に参加できることも大きな売りにしていたのだ。

月会費もそれまでの月額5980円から、一気に980円へ下げた。コロナの影響であまり高額な費用は払えないという会員の声がいくつもあったからだ。

収支よりも、この段階では「規模」を確保したいとも思った。というのは、コミュニティを使ってメンバー間の仕事のマッチングまで進められたらいいと考えたから。

中田敦彦氏
撮影=黑田菜月

掲示板を設けて飲食、接客、物販などの分野で「こんなの売ってますよ」「こんなサービスあります」「じゃ、それ買います」といったやりとりができる場をつくれたらと思って実現した。これをうまく機能させるためにはある程度の参加人数が必要であり、メンバー数増加は重要な課題だったのだ。

コロナ禍を機にサロンの在り方をあれこれ変えたが、こういうのはぼくにとって日常茶飯事。なにしろぼくの座右の銘は「前言撤回」と公言してあるのだ。

その言のとおり、オンラインサロン運営においてぼくは、正気の沙汰じゃないほど朝令暮改をする。でも、オンラインサロンをはじめインターネット関連のビジネス現場では、それくらいでちょうどいいようだ。トライアンドエラーを無限に繰り返して中身を磨いていくのが常道なのである。

いずれにせよぼくは性格的にこれ以外のやり方はできない。最初から長期ビジョンをバシッと掲げる「ビジョナリー」なひととして振る舞えたらカッコいいとは思うものの、根っこが試行錯誤型なのだからしょうがない。

自分には経営者的なマインドに徹するのは難しい

キングコングの西野亮廣さんが主宰する国内最大のオンラインサロンの存在はあまりに有名だ。しかしオンラインサロンを手がけている芸人は思いのほか少ない。YouTubeチャンネルの開設は少しずつ増えた感があるものの、オンラインサロンに関してはあまり例がない。なぜなのだろう。芸人というのは人気商売だから、自分のやっていること全体を応援してくれたり、一緒になにかやろうよという呼びかけに賛同してくれるひとを対象にしたサブスクリプションビジネスとの相性はよさそうなものだけど。

YouTubeなら自分の「芸」をコンテンツにして見せれば事足りるようなところがある。実際はそんなふうに一筋縄ではいかないものの、芸人からすれば、演じる場所が変わるだけという感覚で済む。だがオンラインサロンを主宰するにはもっとこう、経営者的なマインドが必要になってくるからか。

ただし、だ。ここはぼくのオリジナリティでもあり、弱みにもなり得るところなのだけど、経営者的なマインドに徹することは、ぼくにはちょっとできなそうである。