代わる代わるホテルのロビーへやってくるタイ人ホステス

新世界通りの真ん中あたりにある古いホテルの前を通ると、韓国人ママと中年男性の2人組に「遊んでいかないか」と声をかけられた。中年男性は関西弁で、地元の人ではなさそうだ。こちらが飲むだけでもいいならと答えると、「とりあえず、顔だけ見ていけ」とホテルのロビーにあるソファーへ案内された。

タイパブなどが集まるビル。
撮影=藤中一平
タイパブなどが集まるビル。

店に案内されないので戸惑っていると、こちらの意思とは関係なしに、韓国人ママがタイ人ホステスをロビーに連れてくる。中年男性はシステムを説明しはじめる。

「ショートが2万5000円、ロングが3万5000円、部屋代は3000円。このホテルの客室が使える……」

中年男性はこのホテルのオーナーだった。話の最中にも、代わる代わるタイ人ホステスが韓国人ママに連れられ、5人ほどタイパブから顔見せに来た。そのなかにはニューハーフも2人、いたように思う。こちらがどうしていいのかわからず呆然としていると、商売にならないと諦めたのか、ホテルのオーナーはそばにあったゴルフクラブで素振りをしながら再び話し出した。

「兄ちゃん、いい遊び方を教えてやろう。24時を過ぎたらこの近くにあるタイ料理屋に行ってみな。タイ人の女の子と仲良くなれるで。ここだけの話、タイパブなんか行って金落とす意味なんてないんやで……」

タイパブに代わって売春窟と化していたタイ料理店

24時30分、ホテルオーナーに教えてもらったタイ料理屋に入店した。内装はカウンターやボックスシートが目立ち、雰囲気は料理店というよりパブ。以前の店がそうだったことがうかがえる。タイ人男性のオーナーにコック兼ウエートレスの中年男女が1人ずつ、計3人で営業していた。今年で7年目だという。

店内はYouTubeで再生されるタイポップスが大音量で流れ、仕事終わりのタイ人ホステスたちが楽しそうに飲んで食べて、腰をくねらせ踊っていた。ほかにも、隣の上田市から飲みに来た若者グループ、近くで働くフィリピン人外国人実習生、肌を隠すような長袖を着たカタギとは思えないグループなど。深夜のタイ料理屋は大盛況だった。

「サービスするよ。ショート2万5000円ナ」
撮影=藤中一平
「サービスするよ。ショート2万5000円ナ」

タイ料理に舌鼓を打っていると、私のテーブルに「イン」と名乗るタイ人ホステスが同席していいかと近寄ってきた。理由を聞くと、「仲良くなりたい」とのことだったが、実際は売春のオファーであった。このタイ料理店には、店で稼げなかったホステスたちが客を求めて集まってくる。実際に、声をかけた客の手を取り夜の街に消えてゆくタイ人ホステスの姿があった。

「サービスするよ。ショート2万5000円ナ」

と耳元でささやいてくる。断っても、なかなか席を離れようとしない。内情を聞いてみる。

「店に5000円を払わなくていい、こっちのほうが稼げるナ」

ここで客が取れたほうが実入りは良いのだ。そもそも“ペイバー”とは「pay bar」、店側に払うお金のことを意味する。その日のホステスの給料を店の代わりに払えば、連れ出せるということだ。

撮影=藤中一平

韓国人ママがタイ人ホステスたちに“寮にまっすぐ帰れ”と厳しく言う理由はこれだった。店を介さず、仕事をされるのを嫌がっていたのだ。オファーを丁重にお断りしたが、なんとも言えぬ気持ちになった。タイ人ホステスたちの憩いの場でもある料理店だが、現実は生々しかった。