充実した人生を過ごすには何が必要か。俳優の別所哲也氏は、「人生の面白さは『!』と『?』の総量で決まる」と言う。イーオンの三宅義和社長が聞いた――。(第2回/全2回)
俳優の別所哲也氏
撮影=原 貴彦
俳優の別所哲也氏

なぜ、映画は2時間なのか

【三宅義和(イーオン社長)】別所さんは俳優として活躍される一方、1999年から日本発の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」を自ら立ち上げられ、現在まで毎年開催されています。いまやアメリカのアカデミー賞公認映画祭となり、そしてアジア最大級になるまで規模を拡大されたわけですが、この映画祭を立ち上げられたきっかけと意図についてお聞かせください。

【別所哲也(俳優)】20代は俳優としてのキャリアを着実に積ませていただいていたわけですが、30代を迎えるタイミングで、映画デビューの地となったロサンゼルスを原点回帰の意味で訪れてみたのです。現地の人々と旧交を温めるなかでたまたま誘われたのが、ショートフィルムの上映会でした。せっかくの誘いなので観に行ったところ、本当に素晴らしい作品にたくさん出会い、自分のなかでの「映画観」が揺さぶられるほどの衝撃を受けたのです。

【三宅】そうでしたか。

【別所】というのも、それまでの僕には「ショートフィルムなんて、学生の作る実験映画だろう」という先入観があったのです。ところが、実際に観てみたら完成度が非常に高い。「たった5分や10分で、これだけ映画の宇宙を表現できるのか」という驚きがたくさんありました。それを機にいろいろな短編作品を観るようになって、いつしか「映画はなぜ2時間でなければいけないんだ」と思うようになったのです。

【三宅】そう言われてみると、そうですね。

【別所】調べてみると、ジョージ・ルーカス監督やスティーブン・スピルバーグ監督などの巨匠も最初の一歩はショートフィルムであることがわかりました。ですが、日本に帰ってショートフィルムの価値について業界関係者に話しても、誰も共感を示してくれないのです。「理解してくれないなら、自分が上映会を主催して、ファンを増やすしかない」と、まるでアメリカの開拓者精神の気持ちで始めたのがショートフィルムの映画祭です。