コロナより欲望を追う人たち

夜11時、大型ディスカウントストアに立ち寄る。アダルトコーナーにロングヘアの美少女、顔はまだあどけない。アダルトグッズを持ってレジへ。この店では恥ずかしい人用に最初からラッピングされたものと男らしく(?)扇情的なイラストと文言をむき出しのままで売っているおもちゃがある。彼女が選んだのは後者。まして袋はいらないと会計を済ませ、むんずとアダルトグッズを手に持ったままドンキの階段を降りていく。

なかなかすごい光景だったのであとをついていくと外でサラリーマン風の小さいおっさんが待っていた。おっさんはニヤニヤしながら彼女をからかっている様子。アイドル顔負けの女の子とナイロン製の大きなビジネスバックを下げた小さいおっさん、見るからにアンバランスな二人はそのまま旧コマのネオンに消えていった。パパ活なのかなんなのか、こんな不自然過ぎる年の差カップルを他にも何組か見かけた。彼らにとってはコロナより性欲。彼女たちにとっては金、あるいは好きな男(ホストが多い)のためか。

何もそんなことをしなくてもという普通の女の子、それもみんなかわいらしい子だ。若くてかわいい子しか買い手はつかないし売れない。疫禍が長引くほど高クオリティの少女が落ちてくる。象牙の塔で社会正義を振りかざしたって、これが市井の現実である。

居酒屋の売上達成率は28%、それでもマシ

多くの店は10時には閉める協力体制をとっているが、現実には守っていないところも多い。「10時で閉店させていただきます」と書かれていても終電までは営業していたりする。非常にアバウトだが大手カラオケチェーンやネットカフェ、風俗店も多くは協力要請を無視している。あくまで「お願い」であり、「守るが阿呆」とまでは言わないが、夜10時に閉店するカラオケ店なんて食っていけるわけがない。もらえる協力金も世界有数の商業一等地に構える新宿の店舗にとってははした金だ。

コロナ禍の歌舞伎町、本当に世界有数の歓楽街は寂しい街に変わってしまった。

「見てくださいよこれ」

知り合いの居酒屋店員が半笑いでレジの画面表示を見せてくれる。売り上げ達成28%。

「これじゃやってけませんよ、池袋(の支店)もだめ、渋谷(の支店)が少しましかな、とにかくヤバいです」

売り上げてるほうだな、と思った。私が見せてもらった他の居酒屋は売り上げ達成12%だった。ランチの弁当はそれなりにさばけたそうだが、みなこれでは時間の問題だ。

歌舞伎町でボッタクる黒人集団

「なにあれすごーい」

自転車に空き缶を満載したおじさんを笑うあどけないカップル、夏休みデビューで新宿に来た口か、彼はよく知られた御仁で歌舞伎町の風景でしかない。物珍しさと好奇心なのだろうが、痛い目を見る前に帰ったほうがいい。男といたってこの街は運が悪けりゃ一生後悔する目に遭う。

「アニキ今日はどこ行くの」

長引くコロナ禍でホストすら最近しおらしいのに黒人の集団は元気いっぱい。アニキとは別に私が偉いわけではなく、まあ「ブラザー」のようなもの。

「いつかトーゴ行こうアニキ」

彼の故郷はトーゴ。他はガーナやナイジェリアもいた。歌舞伎町の西アフリカ連合とでも言うべきか。なんだかワールドカップのアフリカ予選みたいだが、歌舞伎町で黒人集団は以前から一大組織を形成している。トーゴ、行ってはみたいが彼とは行きたくない。きっといろんなものを運ばされる。そして間違っても彼らのお店にもついていってはいけない。彼らはこう見えて仕事は真面目、しっかりボッタクる。

著者撮影
元気のないホストをよその騒ぐ黒人

「ネパール帰ってもね、仕事ない、お金安い」

対して別の店ではネパール人のウエイターがしょんぼりとつぶやく。この辺、アフリカ人より同じアジアの繊細な感覚のほうがしっくり来る。勝手に店先で吐く泥酔した小娘二人に「ここは困るよ」と言いながらもポリバケツを置いてあげるナイスガイ。本当に愚かな日本人が、申し訳ない。東京都のネパール人は2万5184人(2020年7月1日時点、東京都人口統計課調べ)で5番目に多く住む外国人である。区役所通りは真夜中でも中国語とハングルで注意喚起の放送などが大音量で流れるが、ネパール語を流したっていいくらいだ。私はネパールが中国とインドという大国に負けず、シッキム(シッキム王国)やカシミール(シク王国)のように消えずに独立を守ってきたことを尊敬していると話す。何度もうなずき涙ぐんでいる。里心を刺激してしまった。本当に申し訳ないので注文を多めにする。