日米のランニングシューズ市場で成長率1位を獲得したブランドがある。スイス発の「On」だ。2010年の設立以来、世界中のランナーの熱狂的支持を集め、販売網は50カ国6000店舗に広がっている。スポーツライターの酒井政人氏は「機能美とデザインの良さから『シューズ界のアップル』と呼ばれています。ナイキが先行する厚底にも参入して、競争が激化しています」という——。
On(オン)の「クラウドブーム(Cloudboom)」
写真提供=オン・ジャパン
On(オン)の「クラウドブーム(Cloudboom)」

シューズ界のアップル、スイスブランドの「On」を知っているか

ナイキの厚底シューズが大注目を浴びたこともあり、近年は「ギア」としてのランニングシューズがとにかく熱い。

日本国内では、世界中で広く販売しているナイキ、アディダス、ニューバランス。それから国産メーカーのアシックスとミズノ。これらが“5大ブランド”といえるだろう。

そこに近年は海外から多くのメーカーが本格参入している。

元祖厚底といわれるホカオネオネ、世界で初めてゼロドロップ(爪先と踵の高低差がない)というコンセプトを搭載したアルトラ、米国のランニング市場で高いシェアを誇るブルックス。他にもプーマ、アンダーアーマー、リーボック、サッカニー、ニュートンなどが日本人ランナーの“足”を狙っている。

ナイキ、アディダス、アシックス、ニューバランス、ミズノを追撃

そう国内のランニングシューズ市場は“サードウェーブ”が到来しているのだ。そのなかでも、急上昇しているのがスイス発のブランド。スイッチのようなデザインの「On」(縦書き)という文字が入ったシューズを目にしたことがある人もいるだろう。

2010年に設立されたOnは、約10年で世界50カ国、6000店舗以上でアイテムを展開するほど急成長。日本に上陸して今年で6年目を迎える。5年前の東京マラソンEXPOに出店した際には3日間で16足しか売れなかったが、その後は驚異的な快進撃を続けている。

現在、国内は約600店舗で販売中。某大手スポーツ量販店におけるランニングシューズの売り上げは、ナイキ、アディダス、アシックス、ニューバランス、ミズノの次につけているという。プレミアム(高価格帯)ランニングシューズ市場においては米国と日本で成長率1位を獲得しているほどなのだ。

Onはなぜこれほどの急成長を遂げることができたのか。ブランドヒストリーをひも解くと、その要因が見えてくる。