AKB世代が日本のエンタメを破壊した

中東サウジアラビアでは女性の地位向上が進み、公共の場に一人で出かけられるようになっている。その一環として、2019年10月に韓国の人気グループBTS(防弾少年団)のコンサートがおこなわれた。

BTSは、東方神起やBIGBANGを原形に、本格的なラップを軸に高いダンスパフォーマンスを見せる男性ヒップホップグループで、ビルボードでも1位を獲得している。日本では2018年にメンバーの一人が原爆Tシャツを着た画像をSNSにアップしたことで大バッシングになったことを記憶している人も多いだろう。Tシャツ事件のあとは日本のテレビでは見られなくなったが、世界的には着実にファンを拡げ、上述のサウジアラビアのコンサートでは3万人を動員している。

一方、日本ではAKBの姉妹グループが次々に結成されて、アイドル市場がAKB系に寡占されてゆく。また、AKBの特徴としてCD購入と握手会・総選挙の投票権を組み合わせた「課金システム」を導入して、経済的な余裕のあるファンを優遇した結果、ファンの高齢化が進み、アイドル市場から若者層が逃げていった。

そんな若者の一部が、レベルの高いパフォーマンスを見せる韓国アイドルに注目するのも自然な流れだと言える。かたや、日本のテレビでは、アイドルは「ポンコツさ」をアピールさせれてオヤジ目線での仕事をさせられるばかりだ。その中には、YouTubeで見たTWICEやBLACKPINKなどを通じて、韓国エンターテインメントに憧れるアイドル志望者もおり、いまや「エンターテインメントの本場」として韓国に留学することも珍しいことではなくなっている。

日本発の韓国アイドルグループ“NiziU”の快進撃

ソニーミュージックと、TWICEを輩出した韓国最大手のJYPエンターテインメントが組み、選抜したガールズグループが話題となっている。9人のメンバーで構成されたNiziU(ニジュー)である。まだプレデビューながら、2020年6月30日に4曲が配信されて、オリコンデイリーデジタルのシングルランキングで初登場1位、3位、4位、6位を獲得した。1位を獲得した「Make You Happy」では「縄跳びダンス」が話題になり、「踊ってみた」の動画も次々上がっている。

NiziUがデビュー前からこれほどの話題となったのは、日本で開催されたオーディション「Niziプロジェクト」の様子をインターネット番組やテレビ(日本テレビ系『スッキリ』など)が追っていたからだ。

NiziUのプロデュースを担当するパク・ジヨン(J.Y.Park)氏も、自らもオーディション映像に露出して、候補者に対する的確なコメントや独自の哲学でも注目された。多くのK-POP好きな少女が憧れているであろうTWICEを手がけたこともある「辣腕プロデューサー」だ。

このやり方は、言うまでもなくテレビ番組でつんく氏がモーニング娘。を手がけたときに酷似している。ただ、NiziUでは、アイドル性とともに、高い表現力も求められており、オーディションの時点で水準以上の音楽性と表現力が問われる。