日本人は「未成熟」を応援する

2000年に入ってインターネットが普及すると、アニメや漫画を通して世界的に日本のサブカルチャーが注目されるようになった。とくにフランスやスペインなどのヨーロッパで、“kawaii”をキーワードとする原宿や渋谷のファッションが関心を集め、J-POP人気に火がつき、日本で大人気だったモーニング娘。(1997年~)が注目された。ところが、モーニング娘。はメンバーが入れ替わり、歌やダンスの実力をつけていくごとに、肝心の国内での人気を落としていく。

日本のファンは、アイドルに高いパフォーマンス力ではなく、「頃合いの下手さ」や「一生懸命」を求め、下手だけれどがんばっているといった「未成熟の一生懸命」を応援するのが、アイドルファンの伝統的なスタイルである。完璧なルックスや高い歌唱力はむしろアイドルには邪魔になる。愛らしく透明感のある外見のタレントが、「下手」をカバーしようと一生懸命になる姿に「萌える」。

初期のモーニング娘。がまさにそうだった。何の訓練も受けていない「普通の少女」たちが、「敏腕プロデューサー」の手で試練にあいながらもヒット曲を連発していく。そんな物語が注目を浴びた。

AKB48が国内市場を押さえたが…

ところが、モーニング娘。が高いパフォーマンス力を身につけるたびに、ライトなファンが脱落。そのあいだに「未成熟の一生懸命」をシステム化したようなAKB48が国内市場を席巻した。

日本市場でアイドルとして人気を博すためには、宿命的に「未成熟」を抱え込まなければならない。だが、国際市場では「未成熟」は求められず、AKBの国際戦略も一部を除いて失敗している。

モーニング娘。が開いた国際化の道は、むしろ少女時代などの韓国勢によって広げられていった。2012年以降の「嫌韓ブーム」からは、韓国勢は日本より東アジアや東南アジアを中心とした国際市場を広く目指すようになった。日本のアイドルのフォーマットを使いながら、韓国アイドルが国際市場で活躍できた裏には、韓国では「未成熟」ではなく、外見的な完成度や高いパフォーマンスを求める文化があるからだろう。また、日本のエンターテインメントが無意識的に国際的に受け入れられ、そのあと大して努力しなかったのに対して、韓国勢は国家を挙げて世界進出を後押しして、国際市場に必死でアクセスし続けた努力が結実した。