「このままでは落第」という背水の陣で出会った英語

イーオン社長の三宅義和氏
撮影=原 貴彦
イーオン社長の三宅義和氏

【三宅】それはまた強烈な体験ですね。

【清水】半分冗談だったと思うのですが、とにかくお尻に火が付きました。しかし、それまでの勉強の積み重ねがゼロなので、何から始めたらいいのかもわからない。「やっぱり難しいかな」とあきらめかけていたとき、家で3歳年上の姉が英語の本を読んでいたのです。「それ何?」と聞いたら「英語の教科書だよ」と。

実はそのとき初めて、中学校に入ると英語という科目があることを知ったのですが、ぱっとひらめきました。「いまのうちから英語の勉強を始めておけば、中学のスタートラインでみんなに差をつけることができるんじゃないか」と。

【三宅】なるほど!

【清水】そこで生まれて初めて、母親に500円のお小遣いをねだって、近所の本屋さんで「これだったらできるかな」と思える本を選びました。旺文社の『基礎からわかる英会話』という本で、半分くらいはイラストが入っている、本当に誰にでもわかるような本です。380円でした。

【三宅】よく覚えていますね(笑)。当時ですから、本に音源はついていないですよね?

【清水】ないです。英文に振ってあるカタカナのルビが頼りの綱でした。それを買って、中学に入学するまで毎日それをやりました。とはいえ、家では勉強できないので、授業中にやっていたら、小学校を卒業するまでにそのテキストを全部暗記できたのです。

【三宅】それはすごい!

【清水】そこで中学校に入ったとき、「クラスで一番の成績を英語でとろう」と生まれて初めて目標を立てたのです。

初の英語テストは、まさかの平均点以下

【三宅】では、すぐに一番になれたのでは?

【清水】それが、初めて臨んだ試験で100点どころか平均点にも満たない点数だったのです。平均点が80点くらいなのに、私は70点。

【三宅】それはショックですね。

【清水】本当に涙が出るくらいの衝撃で一生立ち直れないと思いました。しかし、よくよく考えてみたら原因がわかりました。

試験のなかに“This is a pen.”という英文があって、それを訳せという問題が10題あったのです。しかし、悲しいかな、私は「日本語に訳しなさい」という言葉の意味がよくわからなかった(笑)。「これはペンです」と書けばいいのかなと思いましたが、変に英語をかじっていたので「まさかそんな簡単な問題を出すわけがないだろう」と思ってしまったのです。

【三宅】もったいない(笑)。なんと答えたのですか?

【清水】カタカナで「ディスイズアペンヌ」と書きました(笑)。授業中に先生が「いいか、penはペンと読むんじゃないんだ。nの音に注意してペンヌと読みなさい」と言っていたことを覚えていたからです。この和訳問題で30点減点されて、70点だったのです。

【三宅】読解力の問題だったわけですね。

【清水】はい。これをきっかけに「日本語も勉強しなきゃいけないんだ」と思って、とりあえず漢字を中心に英語と同じくらい時間をかけて勉強するようになりました。その結果、次の英語の定期テストで満点を取ることができたのです。たまたま同じ学年でほかに100点を取った子がいなくて、小学校時代に落ちこぼれだった私が学年で一番になるという快挙を成し得ました。

【三宅】そこで自信をつけて、中学、高校と英語熱をどんどん高めていかれたわけですね。

【清水】そうですね。不思議なもので、英語で自信がついたおかげで、他の教科もそれほど勉強しなくても段々できるようになっていきましたね。

【三宅】ちなみに中学時代は、どういったテキストを使われたのですか?

【清水】その380円の本と学校の教科書だけです。当時は英語のテキストの種類が限られていましたし、そもそも買えるような家庭環境ではなかったので。