「体の全血液は4.5リットル程度ですから、4.5リットル中に約5グラムの砂糖が溶けているとしましょう。ジュースを飲むということは、その血液中に20~30グラムの砂糖の塊をドバッと入れるようなもの。血糖値でいえば千の数字が出るほどの量を一気に取り込むことなる。体は血糖値が急上昇しないように、すぐさま膵臓から大量のインスリンを分泌し、千の数字が出るほどのものを140(ミリグラム/デシリットル)程度に抑える。それを何度も繰り返すうちに膵臓は疲弊し、必要なときにインスリンが出せない=糖尿病に行き着くんです」(牧田医師)

肥満、糖尿病、認知症の原因になる

血糖値が急上昇するとき、体内で老化を促進させるAGE(終末糖化産物)という悪玉物質が大量発生することがわかっている。糖質が多い飲み物は、血管を傷めて動脈硬化を進めることと、AGEを生み出して体内に蓄積させるという2点から体を老いに向かわせ、肥満、糖尿病、認知症の原因になるともいわれているのだ。新型コロナの感染では糖尿病などの生活習慣病が重症化リスクを高めると考えられている。

近年、欧米諸国では清涼飲料水を危険視している。消費者の購入を抑制するため、糖質を多く含む清涼飲料水に「砂糖税」が導入されたほどだ。

「Added sugar(=添加糖。加えられた糖)という言葉が、最近海外で注目されているんです」とアンチエイジングに詳しい吉木伸子医師(よしき皮膚科クリニック銀座院長)が補足する。

「かぼちゃやフルーツのような自然の甘みではなく、食品の製造過程で入れた糖という意味です。これが悪い糖になり、世界中で問題視されています。国内の市販の炭酸飲料やジュース類、タピオカドリンクなどの多くには1本あたり40グラム(スティックシュガー13本分)もの添加糖が含まれます」

そうなのだ。私は、日本臨床栄養協会評議員で管理栄養士の遠藤惠子氏とともに国内のメジャーな清涼飲料水の糖質量をチェックし、それを1本3グラムのスティックシュガーに換算。すると誰もが聞いたことのあるような商品名の清涼飲料水はほぼ例外なく、スティックシュガー3本以上の“見えない糖”を含んでいることがわかったのだ(図参照)。

「ちょっと1本」飲むことが、驚くほどの量の糖質摂取につながる

また一見すると体に良さそうな飲むタイプのヨーグルトや、野菜・果物のジュースにも、多くの糖が含まれている。調査にあたった遠藤氏が説明する。

「体を気遣う人に限って、それらを常飲しています。飲むタイプのヨーグルトは飲みやすいように甘くしています。果物もそのまま食べるなら数個で満足感が得られますが、ジュースにすると果物10個分ぐらいの糖分を一気に取ってしまいます。夏になるとライチやレモンなどの酸味の効いたもの、梅味のドリンクがブームになりますが、パッケージにある成分表の『糖質量』を必ず確認してください」