●池谷先生からのアドバイス
仕事に集中したいが、どうも気が散って進まないという経験は誰しもあるものです。ただ、動物としては、むしろ集中力が高いほうが不自然な状態だといえます。野生の動物は、つねに周囲に気を配って危険を察知します。
人間も同じで、何かに集中して道を歩いていたら、事故に遭う確率が高まります。意識が分散するのは、自分の身を守るために脳にもとから備わっている性質なのです。
この脳の性質に抗って集中力を高めるには、よそ見できないように、意識して強制的に視野を狭めるしかありません。
私が集中したいときによく使うのは次の方法です。まず背筋を伸ばして、目を閉じます。そして、とがった三角帽子を被っている姿を想像します。次に手のひらに、テニスボールほどの大きさの白い球が乗っているとイメージします。そのボールを利き手で、三角帽子の頂点に注意深く乗せ、落とさないようにバランスを取りながら、そっと手を離します。
ボールが乗ったら、目を開けて仕事に取りかかります。ボールが気になって仕事に集中できないように思えますが、実際は逆。よそ見をする余裕がなくなり、自然に目の前の仕事に意識が固定されやすくなります。
最初はこの状態に持ってくるまで、3分ほどかかるかもしれません。慣れてくれば、わりと雑にボールを帽子に乗せてもOKです。この「三角帽子」メソッドを使えば、30秒程度で集中力が高い状態に入れるようになっているはずです。
(村上 敬=構成 相澤 正=撮影)