社員満足度調査は「不満分子をあぶり出すための仕組み」に
ある情報提供者は「これはガバナンスの問題」だという。そうだろう。PwCにはパワハラなどの問題を通報するホットラインもあるが、「実際には機能していないことは、社員のみんなが分かっているから使おうとしない」。
経営上層部に社員の声が届くはずの社員満足度調査という仕組みも設けられているが、「パワハラが横行して、社員の退職が後を絶たないことをここに書き込んだ複数の社員たちに対して、いずれも退職に追い込まれた。ヒアリングさえ行われないままだった」という。社内の不満分子をあぶり出すためのゲシュタポのような仕組みなのだ。
なぜPwCではパワハラがここまで横行するようになったのか。PwCはこの数年、組織が肥大化しており、内部統制がこれに追いついていないのに加え、新型コロナウイルスの感染拡大により、経済の先行きを厳しく見なければならないことが響いているようだ。
PwCは常々「パワハラを許さない」と言い、パワハラ撲滅のためにやってはいけないことや、使ってはいけない言葉などを具体的に列挙したガイドラインを設けている。6月のパワハラ防止法施行のタイミングでも詳細なガイドラインの更新が行われているほどだが、声を上げた社員は退職に追い込まれているのが実態だという。
ある男性の情報提供者は「パワハラ行為を明示することで、違法すれすれのパワハラを逆説的にガイドライン化しているようなもの」と言い、いかにも法律の専門家が指南しそうな悪知恵だ。
「報道の力をお借りして、なんとか彼らを糾弾いただきたい」
PwC広報担当者は上記の森下氏の発言内容や弁護士費用の処理方法、内部通報用のホットラインが機能していないことについて全否定し、「記事の内容は事実とかけ離れており、当グループとしては極めて遺憾に思っております。元職員とは裁判手続を通じて係争中のため、事実関係についての詳細な説明は差し控えますが、記事の内容は降格および解雇に至った理由と経緯について、元職員の主張のみに依拠しており、事実とは著しく異なっております」と説明している。
しかし別の情報提供者は筆者にこう訴えた。
「オリンパスのような社会的にもインパクトのある大事件と比べると、ささいなパワハラ問題かもしれません。しかし、社内にはこういった上層部の対応、態度に腹立ち、あきらめ、恐怖を感じている者が多数います。報道の力をお借りして、なんとか彼らを糾弾いただきたいと切に願うばかりです。どうぞよろしくお願いいたします」
痛切でさえある。だが、ドイツのワイヤーカードの不正見逃しで矢面に立つアーンスト・アンド・ヤングという直近の例もある。監査法人の「闇」が暴かれる時は近い。