女性に対し「キレイになろう」と訴えるCMの中には、批判を呼ぶものも少なくない。炎上する背景には何があるのか。東京大学教授の瀬地山角氏は「受け手の価値を一方的に下げ、『上げましょう』と発信する手法が多くの人の反発を招いている」と指摘する——。

※本稿は、瀬地山角『炎上CMでよみとくジェンダー論』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

ブランド、製品開発コンセプト
写真=iStock.com/Panuwat Dangsungnoen
※写真はイメージです

男性社員から「需要が違う」と言われる女性

まずは、ルミネ「働く女性たちを応援するスペシャルムービー」(2015年)です。大炎上して話題になったのでご存じの方も多いと思いますが、謝罪と動画の非公開が早かったこともあり、映像自体を見たことのない方もいるかもしれません。

主人公の女性の通勤シーンから物語は始まります。女性はボーダーのカットソーに白のパンツ、トレンチコートを羽織り、黒のリュックといういでたちです。会社の前で先輩らしき男性と会い、あいさつを交わします。

先輩「なんか、顔、疲れてんなぁ。残業?」
女性「いや、ふつうに寝ましたけど」
先輩「寝て、それ? あははは」
会社に入ると、花柄のミニのフレアスカートにオレンジのカーディガン姿の女性が登場
先輩社員はこの女性に対して「髪切った?」と問いかけます
すると、「あぁ~これ、巻いただけですって~」と笑顔で返答
先輩「巻いただけですって~。やっぱかわいいなぁ。あの子」
女性「そうですね~いい子だし」
先輩「だ~いじょうぶだよ~。吉野とは需要が違うんだし」
女性は立ち止まり、考えます。「需要?」
そして、ここでテロップが出ます
【需要】じゅ・よう
求められること。
この場合、「単なる仕事仲間」であり「職場の華」ではないという揶揄。