居酒屋での感染リスクは軽視できない

「コロナ以前、夫はほぼ毎日上司や部下と飲み歩いていました。だけど最近は『居酒屋での感染リスクは軽視できない』って毎晩まっすぐ家に帰ってくるようになったんです。私は在宅で仕事をしながら娘の相手もしてそのうえで家事をこなしています。だから手の込んだ食事も作れなくて、簡単に作れる鍋や炒め物で済ませていると、『こんなものばかり食べていたら栄養が偏って免疫力が落ちる!』と怒り出す始末。

さすがに我慢ならなくて『それならあなたが用意しなさいよ』と言い返すと、翌日から毎日焼き鳥をデリバリーするようになったんです。『焼き鳥は体に良いって上司が言っていた』って。1日ならまだしも毎日焼き鳥は地獄。娘もいますしやめさせたいんです。焼き鳥って本当に健康に良いんでしょうか」

近年の焼き鳥ブームは、コロナ禍においてこんな形で全国の妻を悩ませていたのかもしれない。焼き鳥のデメリットがわかれば亮太さんもきっと目を覚ますだろう。そこで本誌編集部は、栄養士の笠井奈津子さんにお話を伺うことにした。

「焼き鳥、実はめちゃくちゃオススメなんです。鶏肉は、部位によって多く含まれる栄養素が異なり、焼き鳥ならいろいろな部位を少しずつ食べられるので栄養も偏りにくいんです。例えば、むね肉はイミダゾールジペプチドが多く、もも肉はビタミンB2が豊富。焼き鳥は栄養価に優れ高タンパクなので、コロナ禍で注目されている免疫力の向上も望める素晴らしい料理です」

梅雨どきの慢性的な疲労の回復にも焼き鳥が一役買ってくれるという。

「疲れを感じやすくなる原因の1つが鉄不足。タンパク質とセットで鉄を摂ることによって全身の細胞への酸素供給効率が向上し疲労感の軽減が期待できます。焼き鳥のメニューだとレバーやハツなどは鉄分が多く、これらを気軽に食べることができるのも焼き鳥の良いところと言えますね。また焼き鳥のカロリーは部位によって大きく異なり一串40キロカロリー程度と低いものもあるのでいろんな種類の串を選ぶと安心です。あえて言うなら、皮や手羽先は約200キロカロリーと比較的カロリーが高めですが、同じ種類ばかり食べすぎなければ問題ないでしょう」

亮太さんの言うとおり、焼き鳥は「毎日食べたいくらい」体に良い食べ物のようだ。しかしこれでは美幸さんを「焼き鳥地獄」から救うことができない。

「焼き鳥はすぐに飽きるに決まっています。でも強引に周囲にその習慣を押し付けるこういう人間が出世できるわけありません。娘の教育に悪いです」

たかが焼き鳥、されど焼き鳥。一本の焼き鳥が離婚による慰謝料に化ける日もそう遠くはない。

(構成=松嶋三郎 写真=PIXTA)
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