III.最高裁判事指名リスト公表で立場を明確化

トランプ大統領は2020年9月に最高裁判事指名リストを公表することを約束している。2016年の大統領選挙時には、トランプ大統領は最高裁判事に保守派を指名することを約束し、キリスト教福音派ら保守系団体からの求心力を確保することに成功した実績がある。トランプ大統領はバイデンに対して同様のリストを公開することを迫っており、バイデンは女性・有色人種を推薦するという方針を打ち出している。

今後、バイデンがリベラル過ぎる候補者を発表した場合、その反動からトランプ大統領への強烈な支持熱が復活することが想定される。また、バイデンは米国民から全ての銃を没収すると主張していたベト・オルーク下院議員の選対本部長を自らの選対本部長に採用し、オカシオ・コルテスを環境政策策定グループの共同議長に任命して過激な環境政策を推し進めようとしている。

バイデンは元々中道派とみなされていたが、今後バイデンを過激なリベラルと見なす動きが加速していくことになるだろう。バイデンの左傾化が鮮明になることで、共和党支持者が再びトランプ支持への熱を取り戻すことは既定路線だと言える。

IV.バイデン氏の急所をつく「対中ナショナリズム」

トランプ陣営は「The Toast of China」(中国のお気に入り)という動画を作成し、バイデンが中国に対してどれほど甘いのかを有権者に伝えるために巨額の広告費用を投下した。40年間のバイデンの対中融和実発言並べ、米国からの中国への雇用創出を招いたことを批判している。

世論調査機関Pew Research Centerによると、中国に対する嫌悪感は共和党・民主党に関わらず極めて高水準に達している。トランプ大統領は就任以来オバマ政権下の軍事費抑制で疲弊した米軍を再建し、中東からの撤退を推し進めることを通じて、米軍の対中シフトを急速に進めつつある。2020年7月、南シナ海での米中同時期の軍事演習には複数の空母機動部隊を派遣し、アジア太平洋地域での米軍のプレゼンスを示す形となった。

一方、バイデンにとっては息子のハンター・バイデンが中国での投資事業の利権に浴し、バイデンの外交スタッフのメンバーがペンシルバニア大学のバイデンの名を冠する研究所で中国から資金を受け取った疑惑が存在していることは極めてイメージが悪い。バイデンのウィークポイントを効果的に突くために、対中ナショナリズムは有効な手段の1つと見做されている。