I.経済重視でコロナショックからの速やかな回復を目指す
トランプ大統領がバイデン元副大統領に対して世論調査の数字で上回っている項目は「経済」分野だけとなっている。たしかに、増税・規制強化を平然と口にするバイデンに対して経済運営面から厳しい評価を下す有権者も少なくない。バイデン陣営は包括的な経済政策パッケージを打ち出すことはできておらず、今後も有効性がある政策を提示できる可能性は高くない。
そのため、トランプ大統領がコロナ禍からの経済復活の流れを描き切ることは大きな反撃の一手となるだろう。2020年4月トランプ大統領は、コロナ禍からの経済回復を「ビッグバン」と表現した。トランプ政権が継続することが「ビッグバン」が起きる条件だというPR戦略である。ただし、経済を重視する戦略は、コロナウイルスの第2波が西部・南部に拡大することで想定よりも遅れる可能性も出てきている。
II.民主党州政府における社会問題が連邦政府に波及すると訴える
現在、米国が抱えている社会問題は、主に民主党州知事・市長が存在する地域に集中している。現代の社会問題は都市問題が中心であり、人口が集中する地域で発生しがちなものだからだ。
「不法移民、都市封鎖、暴動などの問題は、米国を破壊する政治をやめて、法と秩序を取り戻す必要がある」。「法と秩序」のフレーズはトランプ大統領が直近で最も強調しているメッセージの1つである。このメッセージは「民主党が州政府だけでなく連邦政府を手に入れた場合、現在の無法と混乱は連邦全体に拡大する」という意味も内包している。
このような連邦政府(共和党)VS.州政府(民主党)という構図を作り出し、その対比を描く戦略は必ずしも功を奏していない。しかし、社会混乱が更に拡大した場合、米国民のサイレントマジョリティがそれを支持する可能性は十分にある。