「最悪のケースを想定し、備えるのは危機管理の基本だ」

「小池百合子都知事は今の状況を『感染拡大要警戒』の段階と位置付けた」
「また、菅義偉官房長官は緊急事態宣言について『直ちに再び発出する状況に該当するとは考えていない』と述べた」

7月3日付の産経新聞の社説(主張)はこのように指摘した後、「東京を中心とする首都圏の感染再拡大に対する危機感が、これでは都民や国民に十分に伝わらないのではないか」と訴える。

そのうえで産経社説は都と政府の感染防止対策を批判する。

「5月25日に緊急事態宣言を解除して以降、政府も東京都もコロナ対策の重心を経済活動の再開に置いてきた。都の『東京アラート』が廃止され、新たな指標は警報としては分かりづらい。感染の状況は正しく、分かりやすく伝えなければならないはずだ」
「政府は、緊急事態宣言の再発令も現実的な視野に入れて、直ちに首都圏のコロナ感染再拡大への対応策を議論すべきである。最悪のケースを想定し、備えるのは危機管理の基本だ」

産経社説は緊急事態宣言の再発令も検討すべきだと書く。そんな産経社説の主張は浮き足立っていないだろうか。

7月2日の107人のうち「感染経路不明」は29%だった

産経社説は指摘する。

「東京都の感染再拡大は、ホストクラブやキャバクラなど、いわゆる『夜の街』を震源地とするものだが、家庭や職場での感染例も報告されている。新宿から池袋や秋葉原へ、さらに都県境を越えて感染が広がる事例もみられ、経路不明の感染者も増加傾向にある。地域や業種が限定されない『市中感染』とみなすべきだ」

飛沫感染するウイルスの感染ルートを調べ上げるのは難しい。どうしても感染ルートが不明なケースは出てくる。だからといって慌ててはいけない。7月2日の107人のうち感染経路が不明な人は20人で29%だった。この比率に注目するべきだろう。

なお産経社説は次のような重要な主張もしている。

「首都圏で緊急事態宣言の再発令が必要となった場合でも、前回の宣言時のようにほぼ全面的に経済・社会活動を止めてしまうわけにはいかない」
「経済を回しながらコロナの拡大を食い止めるために、叡智を集めて備える。その議論に、早過ぎるということはない」

再び緊急事態宣言を出したからといって、経済と社会の活動に大きな影響を出してはならない。「議論に、早過ぎるということはない」は余計だが、海外の例を参考にしながら感染症や経済の専門家らが知恵を絞り、それを政府に提言していくべきである。