6月には「唾液」から調べるPCR検査も認可された

ワクチンや特効薬はないものの、検査体制は整いつつある。たとえば海外に比べて普及していなかったPCR検査では、厚労省は6月2日、唾液からウイルスの遺伝子の有無を調べるPCR検査を認可した。綿棒を鼻や口の奥に差し込んで検査するのに比べ、唾液の採取は簡単で検査数が増やせる。

感染歴を示す抗体の有無を調べる抗体検査や、特有のタンパク質を検出する簡易な抗原検査の体制も整いつつある。

コロナウイルスはインフルエンザウイルスと同じく、寒さと乾燥を好む冬の病原体である。それゆえ秋口からの流行の拡大(第2波、第3波)が懸念されている。

100年前の新型インフルエンザの「スペイン風邪」の場合、1922年(大正11)年の内務省衛生局(当時)のまとめによると、日本国内のスペイン風邪の第1波は1918年8月~1919年7月で、その間に2117万人の患者を出し、26万人が死亡した。致死率は1.22%だった。第2波は1919年10月~1920年7月にかけて発生し、241万人が罹患りかんして13万人が亡くなった。致死率は第1波の4倍以上の5.29%と高かった。

まだ緊急事態宣言を再発令するべき状況ではない

致死率の上昇の理由について旧内務省は、ウイルスが変異してその病原性が強くなったと推定し、第2波で患者が減少したことには、第1波で多くの人に免疫ができたからだと考えていた。

この先、新型コロナウイルスが変異によってその病原性と感染力を変える恐れがある。病原性が強まれば、スペイン風邪のように第2波で致死率が上がる。感染力が高まれば、流行も大きくなる。

いま大切なのは現時点での感染者数をできる限り抑え込んで、秋口から予想される感染拡大の次の波の規模を小さくすることである。ただ、まだ緊急事態宣言を再発令するべき状況ではない。経済活動と感染防止のバランスを見きわめながら、冷静に対応することが重要だ。