日本のコロナ対策で失望の念が増した

先にも述べたとおりキムさんの語彙力は低い。誤解されるような言い方に聞こえてしまうのは仕方がないだろう。変に自信家なのもお国柄か。それでも私は韓国人の普通の男子の本音が聞けてよかった。日本でよく聞くのはどうしても日韓友好だの、文化交流だのと上っ面の意見になる。外国人だって日本人と同様に欲望や邪心があるのは当たり前。外国人だから、ましてや韓国人だからと遠慮することはないと私は思う。だから日本人も言いたいことは言うべきだし、我慢する必要も変に気を使う必要はないだろう。それほどまでに日本社会に外国人、とくに外国人労働者や留学生は浸透している。

「コロナでは日本にイライラです。韓国は抑え込んだのに、日本は全然です。10万円もまだもらってません。遅いです。韓国は2週間でもらえました」

そう言われるとなんだか恥ずかしい気持ちになる。とくに新宿区はクラスター多発な上に給付金も遅れている。キムさんは、シェアハウスに住んでいるそうだが、他の外国人も多くは給付金をもらえていないそうだ。またコロナで母国に帰れず不機嫌な人もいるらしい。

もはや日韓の政治問題は話題にも上らない

キムさんは休憩が終わるとコンビニに戻っていった。バックヤードでもっと話そうよと言われたが、仕事中にそれはさすがにまずいだろう。そんなことしたら怒られると言ったが日本人は怒んないから大丈夫と言っていた。日本人がオーナーなのか店長なのかはわからないが、この大胆なケンチャナヨ(大丈夫)精神はなかなか理解しづらい。

それでも私たちは彼らと付き合っていかなければならない。コロナ禍の東京で働く外国人留学生という体で話を聞いてみたが、それ以外の部分でいろいろと考えさせられた。予定どおりにうまくいかないのもルポの妙味と言うべきか。それにしても、これまでの韓国人留学生といえば「日本はあやまれ」とか歴史問題、政治問題を盾にあれこれ言うのが常だったが、キムさんはもちろん、最近の留学生からはそんな話はあまり聞かない。もうそんなことを言う必要がないほどに韓国は自信をつけたのか。もう日本はそこまで歯向かうような大国でなくなったということなのか。