日本の大学に入るには日本語はいらない?
「だから日本は残念な韓国人の行くとこです。私がまさにそう」
つまり、韓国の若者にとって、アメリカやヨーロッパ(といっても多くが旧西側の先進国だろう)の残念賞が日本ということだ。そして韓国は超学歴社会、超エリート社会なので、成績上位者や特別な英雄(成功したスポーツ選手だったり、特別な軍人だったり)以外は価値がない。キムさんの言葉すべてには同意できないが、韓国という国にそういう面があるのは事実だ。キムさんは韓国の受験競争に敗北し、いろいろな事情があって日本に来たという。
「日本を選んだ理由は成績でここしか来れなかったから。日本の大学はどこでもいいなら誰でも入れます。学生ビザも取れるし、こうして働ける」
留学に至る試験形態はさまざまなのでおくが、日本留学試験(EJU)にせよ日本語能力試験(日能試)にせよ、大学によっては抜け道が用意されている。
日本の大学は選ばなければ日本語のあやしい外国人すら大学生になれる。無名大学の別科や研究生、専門学校に至っては学費さえ納めれば日本語が出来なくても受け入れる。実際、出稼ぎ目的の学生による集団失踪が問題になっている。これが中曽根内閣の留学生10万人計画から受け継がれてきた、日本の受け入れ政策の現実である。そして万年定員割れの無名大学は彼ら外国人で食いつないでいる。もちろん、日本にいる留学生全員がそうだとは言わないが――。
韓国人にとって日本人男性は弱いし幼稚
「私は兵役も終わってます。いい経験でした。軍隊生活をした私からすれば、日本人男性は弱いし幼稚ですね」
本国で無職の期間もあり、兵役も終えているキムさんは、学生というには少し年齢が高い。日本人男性のどこがどう弱くて幼稚なのだろう。キムさんの言い方に引っかかるものがあったので問いただした。すると韓国語でまくしたてて笑ったあと、
「あなたも日本人、怒るのはあたりまえです。でも私は強いしコンビニでバカな日本人の泥棒を捕まえたこともあります。軍隊行った人には勝てないよ」
そう言って、私の肩を強く叩いた。韓国の人の親しみというか、近くなった証拠なのかもしれないが気分のよいものではない。まくしたてた韓国語の内容もわからないし、その時のキムさんの半笑いに決して良い印象は抱かなかった。キムさんは強がっているが、このコロナ禍の異国で相当ストレスがたまっているのだろう。そうでも思わないと私も気分が悪い。しかし、それならなぜ「残念」な日本に来たのか?