来てみたら日本は大したことない

「仕事ですね、韓国は仕事がありません。仕事だけなら日本のほうがいっぱいある。韓国はバイトもない。放射能もコロナも怖い、でも日本は仕事だけはあるし、大学も簡単。大学出たら外国人の就職先もいっぱいある。日本の会社は韓国人を欲しがってます」

コロナ禍でかなり状況は変わったが、昨今の日本企業は積極的に留学生を採用してきた。少子化の穴埋めに若い人材を求める。本来は団塊ジュニア、氷河期世代の採用でも構わないはずだが、日本企業は年食った日本人より若い外国人の新卒者を望んでいる。

「日本はもっとすごい国だと思ってました。韓国人は日本が嫌いですが、日本のすごさは認めてました。でも来てみたら大したことない」

こんなふうに言われるのは心外だが、最近はこういう韓国の若者が増えたように感じる。私がオタクカルチャーの仕事をしていた90年代、韓国企業の若者は日本のアニメやゲームのすごさを語り、日本の出版社に提携や商品化のお願いに来たものだ。冷戦期、そもそも韓国のことなど日本人の多くは興味がなかった。相手にもしていなかったはずなのに。時代と世代が移る中、恨日から反日、そしていまは侮る意味の侮日となったということなのか。

仕事、金、女、日本では全て手に入る

「コンビニは韓国にもありますが、時給は日本がいいです。日本のコンビニと韓国のコンビニに違いはないです。あ、韓国はコピー機がないです。それと日本は挨拶にうるさいですね、韓国のコンビニは挨拶ないです」

コンビニの内容は日本と韓国に違いがないことは私も知っている。違いはサービスくらいか。韓国のコンビニは箸やスプーンを入れてくれないし、キムさんの言うとおり挨拶なんかまずしない。あと立ちっぱなしもない。客の前で椅子に座りながらスマホをいじっていることも。

「ほんとはコンビニなんか働きたくないですが仕方ないですね」

生活費のためには仕方がない。ただ学費はご両親が出してくれたそうで、それなりの家庭環境ではあるのだろう。日本に来たのは、仕事と金のためだそうだが、キムさんにとって日本のいいところはないのか。

「女の子は日本のほうがいいですね。優しいし言うこと聞くし、韓国女は怖いし反抗的です」

キムさんによれば、日本の女の子は韓国人男性に人気だという。日本のことが嫌いな親も、日本人の女性を嫁に連れて帰ると喜ぶというくらい価値があるそうだ。もちろんキムさんが言っているだけで、どれだけ本当かは知らないが。

「私も日本人女性と何人も付き合ってます。なんでもしてくれるし最高ですよ」

薄笑いでうなずくキムさん。なるほど、長身で細身のキムさんは確かにモテるだろう。片言の日本語も母性をくすぐるのかもしれない。何人もとっかえひっかえだそうで、文句タラタラながら日本を満喫しているようだ。キムさんの印象は、昔の生真面目な外国人留学生のイメージとは違う。まあ、今どきの韓国の男性なのだろう。

「日本では大学生でモテるしお金も入る。日本の韓国人の男って仕事と、金と、日本の女の子目当て、これは学歴ない私には韓国で難しいです」