※本稿は、西村則康・小川大介『中学受験基本のキ! 第4版』(日経BP)の一部を再編集したものです。
塾が原因で「勉強嫌い」になることもある
「SAPIX」「日能研」「四谷大塚」「早稲田アカデミー」など、駅前に競い合うように並ぶ大手塾の看板。駅から近く通わせるには便利そうですが、大手塾ならどこへ入れても同じなのでしょうか?
いえ、そんなことはありません。ひとくちに大手塾といってもその中身は様々で、それぞれに特色があります。また、中学受験には大手塾がおすすめですが、大手塾にさえ通わせていれば合格は確実というわけでもありません。確かに大手塾のカリキュラムは受験には有効ですが、それは、お子さんにとってその塾のやり方や環境がマッチしていた場合であり、逆にミスマッチだった場合は、その効果が表れないだけでなく、塾が原因で勉強嫌いにさせてしまう恐れもあります。
では、各大手塾にはどんな特徴があるのでしょうか? 首都圏の四大受験塾のそれぞれの特徴を見ていきましょう。
「成績上位2割」に合わせて授業を進める
【SAPIX】
御三家をはじめとする難関校への合格実績が最も高い塾。そのため、偏差値の高い、いわゆる“いい学校”へ入れたいと思う親の多くが最初に検討する塾です。しかし、授業は成績上位2割に照準を合わせて進められるため、処理能力が高い子は伸び、そうでない子はなかなか浮上できず、挫折感を味わうこともあります。
テキストも上級層向けのため、中位層以下の子どもは授業についていくのが難しいこともあります。2019年に5年生のテキストが改訂され、解説が詳しくなり使いやすくなりましたが、6年生のテキストが改訂される気配はありません(2020年4月現在)。
また、同種の問題でも、5年生のテキストと6年生のテキストの解法に違いがあったり、同学年のテキストであっても、『デイリーサポート』と『デイリーサピックス』で解法が違っていたりします。上位層の生徒は多くの解法を知り、それを使い分けることで学力を高めていくことができます。しかし、中位層以下の子にとっては、それが混乱する原因になっており、注意が必要です。
入塾するには、4年生の段階で、例えば計算なら1年先のものまでできるようになっていないと、授業についていけません。優秀で精神年齢が成熟している子は、塾での学習だけで伸びていきますが、そうでない子は家庭学習で家族の必死のサポートが必要になります。そういう点では、子どもの能力差で家族の負担度に大きく差のつく塾と言えます。