タッチタイピングの技術は生産性に直結する

あと、意外に重要なのが、キーボードを見ることなく、カタカタと軽快に文字を打ち続けられる「タッチタイピング」のスキルだ。正しいタッチタイピングができると入力スピードは確実に速まるので、作業時間の短縮につながる。入力ミスも減るので、企画書を書いたり、議事録をまとめたりする際のストレスも軽減もされるに違いない。

私のようなライター・編集者といった職業でこの技術がとりわけ役立つのは、インタビューなど取材時の音声を文字化する「テープ起こし」の作業をする場面だ。一般的にテープ起こしは、取材後に音声を聞き直しながら作成していくもの。ただ、私は取材後に改めて音声を聞き返すのが面倒なので、現場でインタビューをしながらノートパソコンのキーボードを素早く打ち続け、相手の発言をほぼそのまま、その場で文字にしてしまう。そうすれば、取材が終わったときにはテープ起こしがすでに完成していることになる。

とはいえ、私が絶え間なくキーボードをたたいている姿がハッキリ見えてしまうと、相手は「ちゃんと自分の話を聞いているのだろうか」などと不安になったり、集中力が途切れたりする可能性もある。そうしたことを考慮し、私はパソコンを机の上ではなく腿の上に乗せ、画面ではなく取材相手の目を見ながら打ち続けるようにしている。

インタビューと同時進行でテープ起こし

実際にやってみるとよくわかるのだが、テープ起こしはタイピングが遅いと1時間のインタビューをすべて文字化するのに3時間以上かかってしまうこともある、なかなか負荷の高い作業だ。テープ起こしに時間と労力が費やされてしまい、なかなか原稿の執筆に取りかかれないこともある。対して、現場でインタビューしながらテープ起こしまで終えてしまえるようになれば、もっとも集中すべき原稿執筆にすぐ取りかかることができる。

私はアメリカで過ごした高校時代、主に秘書志望の女性が受講する「タイプライティング」という授業を取っていたこともあり、タッチタイピングの鍛錬を積んでいた。そのため、ライターになってから一度も、取材終了後に音声を聞き直す形でテープ起こしをしたことがない。すべてインタビューと同時進行で済ませてきた。どうせインタビュー記事の場合は取材相手に原稿を確認してもらうことが多いのだから、言い回しやニュアンスのちょっとしたズレ、名称の聞き違いといった細かな部分はそのときにチェックしてもらえばいいのだ。また、現場に同行した編集者が録音していることも多いため、取材後に何かをどうしても確認したくなったときは、それを聞き返せばよい。