「3つの具体例」で説得力を高める

この975文字の文章では、記事のタイトルにもなっている「読めば読むほど舛添氏が嫌いになる不思議な良書」という点をもっとも伝えたかった。あとは書き手の欲として「自爆テロ回顧録」というキャッチーな言葉も言いたかった。われながらいいフレーズだと思ったのだ。文章を書く際には、このように自己満足的な一語を入れたりすると筆がノることも多い。「お、なかなか斬新なことが書けたぞ」と、ちょっとした高揚感にも浸れる。実際、記事の担当編集者からも「言い得て妙ですね」とホメてもらえた。

加えて、自分の伝えたいことを補強する具体例も重要だ。最低でも3例は入れたい。

たとえば、先日書いた「マスク着用の奇妙なルール」というテーマの原稿では、私が奇妙に感じている「屋外を歩いているときはマスク着用を強要されているような気分になるのに、飲食店のなかではマスクを外しても許される空気がある」ということをフックにして文章を展開していった。

記事中では続けて「マスクの着脱について、人々のあいだに独自ルールが生まれてきたのではないか」といった話を書いたのだが、具体例として以下の事柄を挙げた。

・片耳からマスクをぶら下げていれば「マスクをする意思あり」と示すことになり、糾弾の対象にはならない
・顎にズラしてつけていても同様
・マスクを外して歩いている場合、向こうからマスクをつけている人が来たら慌ててつけ、つけていない人が来たらつけないまま

かくして人々は、マスクを巡り勝手にさまざまなルールをつくっていく……という様子を書いたわけだが、ここで述べている「奇妙なルール」のような具体例は、読者に「あるあるwww」と思ってもらわなくてはならない。そのためには、文章のなかで矢継ぎ早に複数のエピソードを持ち出して、テンポよく説得していく(納得してもらう)必要がある。

それっぽい文章が書きたければ「分類」も効果的

具体例を挙げるのと同様の効果を生むのが「分類」だ。この要素を盛り込むと、書き手の伝えたいことがより明快になるだけでなく、文章の仕上がりが「それっぽくなる」という利点がある。要は「きちんと考察したうえで端的にまとめられた文章」感がアップするということだ。先述のマスク記事では「マスクをつけるべき場所・つけなくても大丈夫そうな場所」という分類をした。

【主な「マスクをつけなくちゃいけないプレッシャー」がある場所】
・外を歩いているとき
・公園で遊んでいるとき
・映画館など娯楽施設にいるとき
・電車・バスなど公共交通機関
・スーパー、コンビニ、百貨店、衣料品店を含めた各種小売店
・病院
・会社で会議をするとき
・オフィスビルに入り、エレベーターに乗って、自分のデスクに座るまで
【主な「ここはマスクをしないでもいいよね」な場所】
・飲食店(あくまでも客だけ)
・そこそこ空間的に余裕があるオフィス
・自転車に乗っている人々

こうしたことを書くと「それ、違うだろ!」「他にもあるだろ!」と言いたくなるかもしれないが、これはそもそも私の専門分野ではなく、あくまで実感を書いただけなのでツッコミは甘んじて受ける。