本当に採用の抑制だけで大丈夫なのか

共同通信は職員向けのポータルサイトに、6月19日に開かれた全社部長会での水谷亨社長のあいさつを掲載している。水谷社長は「加盟社と共同が健全な報道機関であり続けるため、スリムで強靭な組織づくりに向け、時代に合った構造改革を進めることが求められている」と発言。その「スリム化」の1つとして人員削減を表明した。正職員の総人員は「採用の抑制」で減らしていくとし、「(人員削減によって)配信能力を低下させるわけにはいかない。継続雇用職員にはより多くの管理職ポストを担ってもらう。本社は管理部門や編集の中間・加工部門などの人員効率化を優先する」と述べた。

出稿部の40代職員は以下のように編集現場の状況を語る。

「たしかに、記者から上がってきた原稿の加筆修正などをするデスクや、整理部といった、編集の中間部門のボリュームが大きくなり、ここの人件費が経営を圧迫してしまっているのが現状です。まずはここの世代を削らなきゃいけないのは理解しています」

また、ある地方支局記者は「共同通信は毎年30人程度の新卒を正職員として採用しているが、本当に採用を抑制するだけで28年度までに300人規模の削減が達成できるのか疑問。若手の中には早期退職制度で退職金をもらえるなら、さっさと辞めたいと言いだしている人もそこそこいますね」と話す。共同通信の展望を悲観的にみている職員も多いようだ。

共同への上納金が加盟紙の大きな負担に

そんな中、共同通信は20年度に限り加盟社の負担金である社費を主として計12億円を削減する方針を表明した。若者の新聞離れは指摘されて久しく、実際のところ新聞発行部数も新聞販売収入も減少を続けている。新聞業界が置かれている立場は苦しい。

水谷社長は「国民が求める正確な情報を適切に提供できる媒体として新聞の存在が再認識されている」今こそ「共同と加盟社は互いに支え合う」必要があるとしたうえで、「新型コロナウイルスにより加盟社を取り巻く経営環境が厳しさを増している。経営上の大きな環境変化だと判断」と述べ、加盟社負担減を決断したという。

別の40代職員は「加盟社にとって社費の支払いが大変な負担になっていることは認識している。地方紙の経営が傾き、しんどい思いをしているのに、われわれだけが何もしないというわけにもいかない」と身を切る覚悟を述べる。