音楽の授業もリモートで「合同コンサート」?

例えば、ニューヨーク大学アートスクールの演劇コースでは、バーチャル・リアリティを使った遠隔の授業運営を行っている。基礎的な指導を受けた受講生はその後、ヘッドフォンを装着し、他の学生とともにシナリオに基づいて演技し、それをネットで公開するシステムだ。

Zoom(ズーム)を使って演劇指導を担当するオーランド・パボトイ教授は、オンライン授業はまだ試験段階と位置づけつつも、「オンラインで実際に演劇指導できるのは、新たな発見だ」と、地元のニュース番組「NY1」で話す。

シリコン・バレーに近い西海岸のスタンフォード大学では、早い時期からオンライン授業に注目してきた。同大学で音楽を教えるクリス・チャフェ教授は、離れた場所にいても、複数の人間がともに演奏できる専用ソフトの開発研究を2000年ごろに始め、自身の授業に取り入れている。

「受講する学生には、このソフトを使って学んでもらう。合唱団と協力し、彼らにソフトの使い方を教えながらともにリハーサルをし、最終的には合同コンサートを目指す」

同大学のホームページでチェフェ教授はそう語り、音楽という専門教育を行うのと並行し、オンラインでのネットワーク操作や音響効果についても、ワークショップ形式で指導するという。

イリノイ大学はMBA課程をオンライン授業に

新しい形のオンライン授業に向け、それぞれの講座が独自に教育方法を考案し、導入する傾向は今後拍車がかかると予想されるが、これに先駆け、すでに確固たる土壌を築いている大学もある。

電子工学分野でトップクラスのジョージア工科大学は、コンピューター・サイエンスでの修士課程を2014年に開講している。対面方式の授業の6分の1にあたる7000ドル(約75万円)の授業料で修士が取得できる同プログラムは、受講者数が1万人近くに及び、コンピューター・サイエンスの専門課程としては、国内で最大規模にまで成長した。

米中部のイリノイ大学でも同様に、オンラインでのMBA課程を2016年に始めた。ビジネススクールの専門サイト、「ポエッツ&クアンツ」によれば、同大学の課程修了までの2万2000ドルという授業料は、他大学におけるMBAのオンライン授業の3分の1、名門大学のMBA課程と比較すると「微々たる」価格と伝える。

プログラムを立ち上げた当時、300人だった学生数は3年後に2600人にまで達したことを受け、すべての通学によるMBA課程を取りやめ、大学側は2019年、オンライン授業に切り換える方針を発表した。