コロナ禍をきっかけに普及したオンライン授業が、アメリカの大学でも広まっている。作家、エッセイストの新元良一氏は「厳しい経営事情もあり、オンライン授業は海外の学生を取り込むチャンスになる。例えば、日本にいながら海外MBA課程を受講できる大学も出てきた」という——。
ヘッドセットを付けた笑顔の黒人男性が自宅でeラーニング‎の授業を受けている
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アメリカの大学はオンライン対応に「明暗」

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、アメリカの日常も大きく変わった。ここニューヨークを含めて、その拡散防止のため自宅待機が地方の行政府から要請され、店舗やレストランから公共機関まで、多くの場所が閉鎖に追い込まれたが、大学もそのひとつである。

突然休校となった各大学は、学期の真っただ中でオンライン授業の開講を余儀なくされたが、学校によってその対応が異なることから、「明暗」が分かれたと言える。積極的にオンライン授業を推進し、これを機に、今後の大学のあり方や新しいビジネスモデルの可能性を見いだす大学がある一方、ある程度のオンライン授業は導入しつつも、景気後退を見据えて経営のテコ入れに舵を切る大学も少なくない。

推進派は「入学者を増やし、コストを削減できる」

そんな中にあって、ニューヨーク大学ビジネススクールのハンズ・タパリア准教授はオンライン授業の推進派だ。「大学の未来はオンラインにある。しかも安上がり」と題された5月25日付のニューヨーク・タイムズ紙の記事で、今以上にオンライン授業に重きをおけば、コロナウイルスの打撃からくる大学の経営危機も乗り切れると話す。

「これまでは、ほとんどの大学でオンライン教育は趣味的なものと見なされてきた。だがこのパンデミックが起こり、(事業の)代案となった。もし大学側が戦略的にこれを好機と見なせば、オンライン教育によって学生の入学は加速度的に拡大し、大規模な経営コストの削減が図れるだろう」

そう予想するタパリア准教授だが、すでにいくつかの大学では精力的にオンライン授業の導入を行い、学生たちからも好評を得ている。