通学形式と比べ8割引の授業料で受講できる

IMBAというこのプログラムについて、同大学ビジネススクールのジェフリー・R・ブラウン教授は大学のホームページで次のように話している。

「われわれは、日々忙しい人でもMBAが取得できる、いわば教育の民主化を目指している。このプログラムでは、現在の仕事や子育てを継続しつつ受講できる」

ちなみに名門と言われるインディアナ大学のビジネススクールでは、州内の住民であれば約3万ドル、州外からの受講者は5万4000ドルかかるが、これは1年間の授業料だ。通常ビジネススクールは2年間で修了となるので、全課程をこなすと倍の10万8000ドルがかかる。単純比較はできないが、8割引の授業料でイリノイ大学に留学できることを考えれば、オンライン授業がいかに安いかが分かる。

授業自体もそうだが、ビジネススクールに通う大きな目的として、将来を見据えての仕事のネットワークづくりが挙げられる。受講生同士のつながりに加えて、地域レベルで企業訪問をし、数日間通うことで当該の会社についてはもちろん、受講者が志望する業界全体に関しても学べるプロジェクトが組まれている。

「対面形式の授業が食われる」と懸念もあるが…

こうしたオンライン授業が推進されると、学内での授業運営のバランスが崩れるという声もある。受講料が格段に安いため、従来の対面形式の授業が食われてしまうという懸念だ。

「オンライン授業は、取り立てて対面型の授業の収益を奪ってはいない。すでに社会人となった学生が、スキルアップのために応募してくるように、逆に、これまでとは違う層が高いレベルの教育を受けやすい状況になった」と、批判的な意見に対し、先のニューヨーク大学のタパリア准教授は反論する。

その一方で、オンライン授業のさらなる浸透には、大学内での取り組みの充実化が必要と同准教授は指摘する。たしかに遠隔地にいる複数の受講生へ向けて同時に授業をするには、教室の設備を整えるとともに、教員側も操作方法の学習に加え、新たなカリキュラムの内容を考案し、実行することが求められる。

しかし実績を重ねていけば、大学はもとより、大学教員全体の資質の向上にもつながる。その好例として、今期だけでも13万4000人もの受講者を集めた、マサチューセッツ工科大学で設ける、無料で生物学の基礎知識を教えるオンライン講座をタパリア准教授は挙げ、教育方法など、同校以外の生物学の教授の多くがこれに追いつこうとしているという。