調整と情報の共有

交渉の進め方のルールを共有することは、交渉での調整を容易にしてくれる。人的資源の専門家、アンジェラ・ケロスと私は、見知らぬ者同士の交渉と友人同士の交渉を比較して、見知らぬ者同士はえてして、双方に都合のよい交渉の進め方を見つけるのにてこずることを発見した。その結果それに対し、友人同士は交渉の人間関係や手順や情報に関連した行為を、情報の共有と正確な解釈を高めるようなかたちで調整することができる。

交渉を行う友人や知人同士が情報を共有することには、多くの利点がある。ノースウエスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメントのブライアン・ウッツィー教授は、銀行家はよく知っている相手と取引するときは細かい情報まで共有し、協力して問題解決にあたるが、新規の顧客と取引するときはそうはしないことを明らかにしている。また、ブリティッシュ・コロンビア大学のマーク・デイビッド・シーデルらは、ハイテク企業が社員を雇う場合、その会社で働いている友人がいる候補者のほうが、会社側が当初提示した給与の額を交渉によって上げてもらえる可能性が高いことを発見した。

 

結果に対する好みや効用の影響

人間関係は、交渉プロセスにも結果にも影響を及ぼす。しかし、ネゴシエーターの目的や好みや解釈も、やはり結果に影響を及ぼす。経済的見返りは一般に交渉の成功を測る最も重要なモノサシとみなされている。しかし、社会的なつながりや仕事上のつながりがある人間同士の間で交渉が行われる場合には、合意がきちんと実行されるか否かも重要な要因になる。製品の出来が悪く納品も遅れていたとしたら、ロレンザはあの交渉を成功とはみなしていなかっただろう。

最終的には、関係そのもの──その関係が続いているか否か、そして当事者がその関係に満足しているか否か──が、交渉の成否を測る重要なモノサシになる。1つの合意には限られた価値しかないが、強固で安定した人間関係は何年にもわたって交渉で見返りを生むことができるのだから。

(翻訳=ディプロマット)