季節性コロナウイルスの免疫で新型コロナにも対応できる
中国で流行しているウイルスが、コロナウイルスと聞いて真っ先に脳裏に浮かんだのは日本で流行しなかったSARSやMARSと「冬の弱毒カゼウイルス」というものだ。日本では冬に、季節性コロナウイルスが毎年流行する。医師は統計で知っているだけのウイルスだ。弱毒なのでPCRなんかしないし、放っておけば治る鼻カゼのウイルスの一つだ。同時に僕たちベテラン医師は、10年前の新型インフルエンザ流行も思い出していた。
総じて中国周辺のアジア諸国の被害が少ないことが明らかになってきている。約半数の人が季節性コロナウイルスの免疫で新型コロナウイルスにも対応できることが学術誌「Cell」に掲載された。欧米でそうなのだからわれわれ日本人はもっと免疫を持っているかもしれない。アジアで人知れず変異を続けて流行していた季節性コロナウイルスが、新型コロナウイルスのワクチンの働きをしていた可能性が高い。また、1回目の感染が2回目の感染を悪化させるADE(Antibody-dependent enhancement)という免疫過剰反応も起きないことが予想されている(※2、※3)。
この重要な論文を支持し日本の未来を占うのに良い例がある。中国の武漢では、発症者はゼロが続いている中で、市民1000万人全員にPCR検査を行い約300人がPCR陽性だった。これは、たとえ市中にウイルス保有者がいても症状が出ないし、感染は広がらないことを意味している(※4)。
現実の医療現場とは全く異なるメディアの喧騒
具合が悪くならなければ問題ないので、無症状のウイルス保有者をあぶり出す必要はない。自宅待機や隔離といった魔女狩りの必要も全くない。先回りしてアドバイスするが、今後メディアが日本人の選択的な抗体の保有率が低いと脅されても、抗体は免疫の一部にすぎないから季節性ウイルスで獲得された総合的な免疫力を信じて気にする必要はない。
今回のコロナ被害で一番最初に驚いたのは、現実に起きている医療の現場とメディアとの乖離だった。医療は科学だ。現象を観察し、それに対応すべきだと信じている。現場とは全く異なるメディアの喧騒に最初は戸惑い、今は納得している。たぶん、感染爆発のピークを抑えるという目的以上に恐怖を増幅するメディアは多面的に有用だったことが推測される。
その恐怖の源泉は、「判断を誤ると過去にもどれないから、できるだけ慎重に」だったのではないだろうか。パンデミックを起こして、病院が患者であふれ返り医療者もバタバタと倒れていく海外の映像は恐ろしい。けれども、その幻に利用される危険性も認識していないといけない。
考察のために少し、その過程を振り返ってみよう。