「メディアは恐怖をあおりすぎている」と取材を断った
新型コロナウイルスの確認は2019年12月初旬だ。2カ月後の1月末には僕が働いている秋葉原でまだ売られていたマスクを武漢の観光客の方がたくさん購入されているのがニュースになっていた。彼らはウイルスを持っていたはずだ(※5)。
そのうち、中国全土に広がり始めた。中国は武漢を閉鎖し、突貫工事で専門の病院を建設し対応を始めた。僕は、どんどん亡くなる人が多くなるかと思ったけれど、現実は違った。中国の沿岸部では被害は少なかった。
そこで僕は、「新型コロナウイルスは、エボラウイルスのような致死性の高いウイルスではない」ことと、「地域や環境によって被害が大きく異なるウイルス」だと認識した。
さらに無症状の人も多いことが報じられたので、「このウイルスには水際が無い」こともわかった。無症状の人が多いウイルスを封じ込めるすべを人間は持たない。
その頃、テレビ取材依頼が繰り返しきていた。僕は、「アジア辺縁国の日本ではコロナウイルス被害は少ないのに、あなた方メディアは恐怖をあおりすぎている。ひとごとのように捉えているかもしれないが、そのうち放送局内でクラスターが発生するだろう」と伝えて断った。年末年始から日本には持ち込まれていると何回も強調したが、誰も聞く耳を持ってくれなかった。今では、保存されていた血液の解析から2019年から米国や欧州ですら新型コロナウイルスが流行していたことが明らかになっている(※6)。
フェイクに近いニュースで全てが埋め尽くされていった
武漢の感染がピークの2月上旬、ダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に停泊した。新型コロナウイルスの感染者がいて、船内で感染拡大が起きているとのことだった。そのころから日本のメディアは、さらにおかしな方向に行ったように思う。外来患者さんがおびえ始めたのはその頃からだった。
僕のブログの新型コロナウイルスについては1月24日付けが最初で、「日本のニュースは扇情的で客観性に乏しい」とつづった。例えば日本では季節性コロナウイルスが毎年流行していることや、感染者が全員高率に死んでいく強毒ウイルスではないことをメディアは全く伝えなかった。今でも感染者の2割が重篤化するとたまに聞く。
NHKでは「新型ウイルス 不安広がり懸念『公的機関は多くの情報発信を』」といった報道がなされた。感染者が乗った路線や駅を公共交通機関が公開するように迫っていた。メディアが魔女狩りまで先導しはじめたことを2月20日のエントリーに書いた。
その後、新型コロナウイルスのフェイクに近いニュースで全てが埋め尽くされていった。他の病気と戦っている患者さんの方が多いだろうし、他のニュースだってたくさんあるはずだから、疑問を感じ続けた。そこで、マイナス検索を使ってコロナウイルス以外の話題を検索することを勧めることをブログに記した。3月になり日本はどうやら武漢やアメリカのようにはならなそうなことが判明してきた。