4)運営母体に事業実施能力が伴っているのか
サービスデザイン推進協議会は、2016年の設立時から3年間、一度も法律で定められた決算公告を実施していない。また、報道情報によれば、コールセンターには電話してもつながらず、電話がつながっても、個別で不備の確認はできないとの回答をされたとの声があるようである。つながらないコールセンターでは、事業実施能力が伴っているのか、疑問である。
5)地域や業界を巻き込んだ形を伴っているのか
筆者は、協議会方式を否定するつもりはない。特定企業に事業を任せると、事業推進をしにくい場合も、国の事業の場合にはあり得ると思っているためである。
例えば、先ほどの中小企業再生支援協議会の場合、商工会議所や都道府県の中小企業振興センターを運営母体にしたことから地域ぐるみの取り組みが可能であったが、特定の会計事務所などを運営母体にした場合、地域金融機関が再生支援に応じてくれないことは起こり得る話だろう。しかしながら、サービスデザイン推進協議会のケースの場合、果たして、地域や業界を巻き込んだ形を伴っているのだろうか。
協議会組織に申請手続きのエキスパート(行政書士や中小企業診断士など)が伴っているのか、業界を巻き込んだ組織体制になっているのかは丁寧な説明が必要だろう。なお、サービスデザイン推進協議会は、6月8日に新執行体制を公表している。
適切な情報開示を伴った事業遂行が必要だ
筆者は元経済産業省職員であり、アナリストであり、さらには情報開示(ガバナンス)の専門家の1人であるが、行政の世界においても、情報開示の適正さを伴った事業遂行が必要な時代に変わるべき時を迎えていることは強調したい。
情報開示の適正の観点からすると、法的な問題はなかったとしても、事業遂行上、さまざまな問題点を伴っている点は否めないだろう。ただ、不用意に持続化給付金事務事業をたたいてしまうことで、肝心の中小企業の持続化給付金の支給が遅れることは本末転倒であり、避けたい事態である。
新型コロナウイルスの感染拡大影響により、事業継続の危機にさらされた中小企業は国内で数多く存在する。国内のセーフティーネット網の整備こそが今、緊急対応すべき課題である。今回の問題浮上が、国による中小企業の早期支援につながるように変わっていく流れになることを心より願うばかりである。