中国の大量造船による市況暴落への対処法
商船三井は、技術チームを中国各地の造船所に派遣して分析した。鉄鋼原料船部の永田は「国営造船所は7割程度完成させるでしょうが、新興造船所はおそらく半分もいかない。トータルで5割程度の竣工では」とみる。
だが、たとえ受注量の半分であれ、大量造船の衝撃は小さくない。海運界では10年以降、ケープ型用船料は5万~6万ドルに下がると予想されている。「ケープ型でフリーに用船する船の比率を下げ、市況のいいうちに長期契約を結ぶ。あるいは他の新造船も増やすなど、総合的な対処をしています」(商船三井広報室)と10年問題の高波に備える。
商船三井の針路には、投資銀行の参入という「未知との遭遇」も浮上した。海運市場は、巨額の投資マネーを呼び込んでいる。乾貨物の運賃指標とされるBDI(バルティック ドライ インデックス)は、過去5年で10倍に上昇した。
米国の投資銀行モルガン・スタンレーは、海運業界の経験者を大勢リクルートして用船、運航にも長い手を伸ばしてきた。迎え撃つ側はどう受けとめるのか。
商船三井・永田は冷静に応える。
「海運マーケットが成長する意味ではいいことです。一方で、船と荷が増えるほどオペレーションへの要求は厳しくなっている。船の維持管理状況やクルーの質も含めてミシュランのように星数で総合評価されています。海運はネット上の取引だけでは成立しない。顔と顔の関係も大切。そこをわれわれは磨いてきました」