責任所在はクルーズ会社にあるのか、厚労省なのか

この期におよんでという気持ちは拭えないのだが、それでも気を取り直し、船長にお礼をと思いフロントに電話をかけた。しかしいつものことながら出ない。やがて緊急時には911をという留守電に切り替わり、切れた。このような状態は恒常化しているのだが疲れがどっと押し寄せる。

さかんにネット検索をしていた妻が、これこれと言いながらYouTubeを見せてくれた。アップされるや爆発的に有名になった神戸大学・岩田健太郎教授の船内状況告発ビデオだ。私たちにとって、このビデオの内容はこの船の状態を表すものとして不思議ではなかった。さもありなんと思ってしまう。私たちが、方針の定まらない隔離の現場を実地に体験しているのだから。妻が朝からときどき空咳をはじめていた。とてもイヤな気持ちで、普通の風邪の症状であることを祈る。考えないことにしよう。

A記者に「下船の見通しおよび支援体制について」の文書をメールで送信する。この送信した文書について、私は昨日から少し気になっていることがあった。14日、橋本副大臣がはじめて船内放送をして以降、厚生労働省は徐々に前面に出てきていた。それまでは、厚生労働省の意向はプリンセス・クルーズ社から放送あるいは文書で伝えられていたのだ。しかし、荷物の運搬に関するような、本来船側がやるべきことまで、厚生労働省が通達するようになっていた。裏側でなんらかの大きな変化があったのだろうか、そんな推測をさせ疑問をもたせるのである。そこまで厚生労働省とプリンセス・クルーズ社との関係や責任所在がわからなかった、ということだ。

下船日を当日の朝に知らされ大混乱

繰り返すが、香港の下船者に陽性反応が出たこと、したがってこれから本船が日本政府の管理下に入り検疫を行うこと、そして14日間の隔離に入ること、また80歳以上の乗客からPCR検査をはじめること、これらの情報はすべて船側から知らされたものだ。

それまで厚生労働省は直接乗客には語りかけてこなかった。隔離・検疫が厚生労働省の責任で行われている以上、厚生労働省は乗客に自分たちの考え、方針を話すべきだった。それは橋本副大臣の放送まで一切なかった。それが突然、副大臣名で配られた「下船の見通し」の文書では、荷物の回収にまで触れるようになった。驚かないほうが不思議なのだ。

私たちは、前日知らされるはずの下船日を、下船当日の朝フロントより知らされ大混乱をした。厚生労働省の変化の不思議は、下船通知にまで影響したのではないかと、推測してしまう性質のものだった。ここにある問題は、何度も繰り返すが厚生労働省とプリンセス・クルーズ社のおたがいの責任範囲、責任所在の問題である。最終責任はどちらにあるのかということだ。新たな感染者、この日は88人。