「誠意」という抽象的な言葉を浴びせられ続けると、担当者としても「こうすれば矛を収めてくれるのだろうか」と想像して対応するようになる。そうやってクレーマーは、自分の要求内容を「担当者が自分の判断でやった」というカタチで実現させてくる。
こういったときには「誠意とは具体的にどのようなご要望でしょうか」とはっきり踏み込んだほうがいい。「それは自分で考えろ。わかるだろう」と反論されたら「わかりません。金銭的要求という理解でいいでしょうか」とさらに述べる。こうやって曖昧な相手の要求を固めていくといい。
電話では手に負えない時の最終手段
④書面で回答する
丁寧に説明をしてもなんども電話をし続けてくるクレーマーもいる。そのようなケースでは、電話でなくできるだけやりとりを書面で実施するようにする。将来的にトラブルになったときも書面があれば資料として利用することができる。
電話対応の難しいのは、「言った、言わない」の議論に陥ってしまうことだ。そういった不毛な議論にならないためにも書面でのやりとりに持ち込んだ方がいい。
「お客様の御意向はわかりました。大事な御意見ですので上司と協議のうえ正式な書面にて回答させていただきます」と説明して書面対応にもっていこう。「大切な方であるからこそ書面にて回答させていただきます」というテイストで話を進めると相手も拒否しにくい。
こういった書面をだすときには、必要最小限の回答だけするのがポイントである。懇切丁寧な文書をだすと、かえって揚げ足をとってくる者もいる。
また、書面でやりとりをすると大量の質問書を送りつけてくる者もいる。これに対してすべて回答していたら終わりがない。ある程度の説明をしたら「今後は回答の必要があると判断したときのみ回答します」と打ち切る姿勢も必要だ。
あなたの電話対応で救われる人がいる
カスハラの行為にでる者は、ごく一部の者でしかない。ほとんどの方は良識ある行動を取っている。問題は、ごく一部の悪質な者により現場全体が疲弊してしまうことだ。クレーマーの電話に忙殺されて身動きが取れなくなり、他の方へのサービスの劣化にもつながってしまう。
現場担当者の士気は低下し、電話によるカスハラ被害に悩み、耐えきれずに「退職したい」と申し出てくるときもある。こういうときに経営者が「そこをなんとか」と言ってもなかなか収まらない。経営者や現場の責任者は、電話応対する仲間を守る責務がある。
「電話が怖い」という人もいる。同時にあなたの電話で救われる人もいるはずだ。カスハラ被害で疲弊しないための参考にしていただきたい。