“シブチン”緊縮派の経済学者を重用する日本の危機
「恐慌」を克服して、戦争を回避する方法はあるのでしょうか。実は大恐慌後、ヒトラーの率いるドイツや、蔵相の座に高橋是清が就いた日本は、減税と、税金を“大盤振る舞い”する積極財政によって景気を刺激、短期間での立ち直りを見せています。その積極財政が軍備増強につぎこまれ、やがて他の列強との戦争になだれ込んだのは誠に不幸なことでしたが、同様に立ち直った米国が「ニューディール」と名付けたこの「減税と積極財政」が、恐慌脱出の重要なカギの一つだったことには留意すべきでしょう。
しかしそうなると、その真逆の“シブチン”緊縮財政路線をガンとして変えない日本政府と財務省の姿勢に懸念が残ります。「自国の通貨建てなら、膨大な支出も可」とするMMT理論が世界で真剣に議論され、「財政赤字は『むしろ良い』、変わりつつある評価」(1月12日付ロイター)、「コロナウイルスが破壊した財政赤字の神話」(4月17日付・英ガーディアン紙)といった記事も散見されるようになった今、2度にわたる消費税増税で景気に冷水を浴びせ、今この時期に新型コロナの「専門家会議」に財政緊縮派を4人も送り込んだ安倍政権と財務省の姿勢には、やはり不安を覚えます。
財政赤字に気を取られ、『一向に給付されない「一律10万円」…いつまで国民は我慢を強いられるのか』の拙記事で述べたように中途半端な「戦力の逐次投入」の愚策を続けると、恐慌の谷底から抜け出すのはますます難しくなります。ただでさえ、コロナ前の状況に回帰するには途方も無い期間を要する可能性があるのです。我が国にとって平成の30年間は「かつての日本の国力が失われた30年」だったわけですが、これが更に長期化し、日本のさらなる凋落につながることになりかねません。