しかし日本では政治という分野が学校でも社会でも「さわらぬ神にたたりなし」という扱いになってしまっています。デモをする一般人が奇異の目で見られたり、政治的発言をする芸能人がバッシングされたりする背景にはそういった「日本社会の暗黙の了解」があるのではないでしょうか。

「欧米では政治について話すのはタブー」という誤解

日本で誤解されていることの一つに「欧米では政治について話すのはタブー」というのがあります。筆者自身、日本人から「ヨーロッパでは政治について話すのはタブーなんでしょ」と聞かれたことがあります。

たしかにビジネスの場で政治の話をすることはありません。目的はビジネスを成功させることなのですから、ここでは余計なことを言わないというコンセンサスがあるのは確かです。

しかし前述のように、学校や友達同士の間で政治の話をすることは珍しくありません。長い付き合いのなかでは、必然的にその人が政治的にどういう考え方なのかは伝わってきますし、とくに避けるような話題でもありません。

政治について「語れる」のが民主主義の国であり、政治について意見を述べることが「はばかられる」のは独裁主義の国だというのが、ドイツ社会のコンセンサスです。

日本の芸能人が政治的・社会的発言をあまりしない理由

今まで日本のタレントはあまり政治的な発信をしてきませんでした。政治的なカラーがついてしまうとCM起用の話が来なくなることを懸念しているからだといいます。そのためタレントは、どんな商品のコマーシャルの話がきても良いように、普段からあまり「個」を出さないという事情があるようです。

タレント自身がどの政党を支持しているか公にしてしまうと、せっかくファンだった人が「自分が支持している政党と違うから」という理由でファンをやめてしまうかもしれない、という懸念もあります。つまりCM起用や人気を考えて「カラー」を出さないようにするというのがいわば日本のタレントの宿命です。

欧米の場合は、恵まれた環境にいる有名人こそ、その影響力を使って社会に何らかの形で貢献しなければいけない、という「ノブレス・オブリージュ」(高貴な者の義務)に基づいた考え方が一般的です。有名人が多額の寄付をしたり、政治的なことも含めて社会問題に言及をすることこそ【あるべき姿】だと思われているわけです。