柳井会長のメッセージの強さ
まずは、決算説明会における、代表取締役会長兼社長の柳井正氏のメッセージをみていきましょう。
柳井氏は「今回の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を通じて最も明らかになったのは、世界が完全に一つにつながっているということ」と語っています。世の中のニュースが、「分断」を強調したもので溢れているなかで、このメッセージは際立ち、投資家などから注目を集めました。一部の国や企業、個人が「自分さえ良ければいい」という、「自国ファースト」「自社ファースト」「自分ファースト」に陥っているなかで、柳井氏は企業の経営者として、「こういう時だからこそ、冷静に、理性的に事態を認識し、『何が本当に正しいことなのか』を常に考え対応」すると述べています。
では、実際にどのような行動をしていくのか。オンラインの生活が定着しつつあるなかで、今後は、旧態依然とした業界や変化についていけない企業は、より経営が厳しくなるでしょう。
古い制度や仕組みを大胆にスクラップ
ファーストリテイリングは、今回の危機を「新たな機会」と捉え、「古い制度や仕組みを大胆にスクラップし、ゼロベースから出発して、会社のすべてをつくり革(か)える覚悟」をしています。ファーストリテイリングがコロナ以前から進めていた、プロジェクト自体が“一歩先の世界”を見ていたことから、今後は既存のプロジェクトを強化し、よりドラスティックに変革をしていくという見通しに、期待感が高まっています。
2016年4月に竣工した有明物流センターを皮切りに日本国内で物流センターを稼動させたユニクロ。この有明プロジェクトを今後、より強力に進めていくと述べています。ファーストリテイリングは商品だけではなく、情報も同時に提供する“情報製造小売業”を目指して進んでいます。小売業ではなく“情報製造小売業”に転換することで、ビジネスサイクルは今まで以上にスピーディになります。市場調査から企画、生産、販売までのリードタイムが大幅に短縮され、消費者が今欲しい商品を確実に早く提供できるのです。